活動報告(ブログ)

子育て支援/福祉

若者支援、なにが必要?

こんにちは。28歳の目黒区議、かいでん和弘です。本ブログは目黒区の少子化対策についての後編です。前編はこちら(↓)

はじめに

はじめに一言おことわりしておきます。それは、私は「みんな結婚して子どもを作るべきだ」と主張するつもりは決して無いということです。

そもそも結婚するかどうか、子どもを作るかどうかという判断は個々人の自由意思に委ねられるべきものであり、そこに他人である行政が「○○しなさい」や「○○するべき」と口を出すことは、あってはならないと思っています。

ただ、「結婚したい」とか「子どもが欲しい」と思っているのに障壁があってできないという方に対して、行政が支援することは必要だと思っています。それを考えるのが今回のテーマですのでご理解ください。

未婚化の原因

前回、「出生率低下の要因のほとんどは未婚化・晩婚化によるもの」だと書きましたが、そうだとすると、出生率向上策を考えるためには、「なぜ未婚化・晩婚化がここまで進んでしまったのか」という理由を確認しておく必要があります。この点、専門家の間でも百家争鳴の状態ですが、ここでは特に「①経済的な問題」「②お見合い結婚→恋愛結婚への変化」の2点にスポットを当ててみます。

① 経済的な問題

日本の経済的な停滞と、若者の経済的な不安定化が未婚化を招いているのではないかということを主張するのが、中央大学教授の山田昌弘氏です。以下、氏による「ハイパーガミー(上昇婚)の結婚難」仮説を、東京大学教授の赤川学氏が解説した部分を引用します。

戦後日本の高度成長期には、多くの女性、たとえば地方零細農家出身の女性にとって、サラリーマンの妻になることは「生まれ変わり」であり、女性が自分より地位の高い男性と結婚するというハイパーガミーであった。都会の若者と結婚しさえすれば、母親よりよい生活ができる。またサラリーマンとなる夫の潜在的経済力は実家のそれを上回っているから、結婚しないで親元にとどまるほうが割に合わない選択となる。こうして高度成長期には、早婚が成立していた。

 

ところが経済が低成長に転じると、息子の経済力が父親のそれを上回る機会が少なくなる。女性がよりよく生まれ変わるためには、自分の父親以上の経済力がつきそうな男性をみつけなければならないが、低成長によりその可能性は小さくなっていく。そこで、経済力が十分でない男性と結婚して生活水準が低下するくらいなら、実家で両親と暮らしたほうがましという選択に傾く。

赤川学『子どもが減って何が悪いか!』p.125 (2004年,ちくま新書)(太字はかいでん)

ここには言及されていませんが付け加えて言うならば、誰しも「自分の子どもには自分が育ってきた環境(実家)と同等以上の暮らしをさせてあげたい」と思うものではないでしょうか。でも親よりも豊かな人なんて今の時代ほとんどいないから結婚に踏み切れないと。そのうえで、山田氏は次のように結論付けています。

日本社会では、たとえ愛があっても、子どもが好きでも、経済的条件が整わなければ、結婚や出産に踏み切らない人が多数派なのだ。

山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~』(2020年,光文社新書) (Kindle の位置No.431-432)

② お見合い結婚→恋愛結婚への変化

国立社会保障・人口問題研究所『第15回出生動向基本調査』

1960年代までは主流だったお見合い結婚も、2015年の国の調査ではすでに全体の5.3%にまで減少、大部分は恋愛結婚になっています。そしてそれに呼応するように年々長くなっていっているのが、結婚までの交際期間です。

国立社会保障・人口問題研究所『第15回出生動向基本調査』 (一部かいでん加工)

2005年時点の分析によれば、恋愛の結婚までにかかる平均交際期間は4.07年なのに対し、見合いの場合は約1年と、お見合いの方が早く結婚に至っているといいます(まあそうですよね)。恋愛結婚が増えるにつれて交際期間が伸びているのも当然です。

別に私は「お見合い結婚の方が良い」なんていうつもりはありませんから、このこと自体は別にいいのです。ただ、恋愛と結婚の関係については次のような分析もあります。

結婚するかどうかわからない恋愛を、締め切り感覚がないまま、男女双方で「もっと良い人がいないかな」と過剰に再帰性を働かせるのだから、結婚にたどり着くわけがない。そしてこれを繰り返すうちにだれが本当に好きな人だったのか、理想の相手だったのか、分からなくなる。

能勢桂介; 小倉敏彦『未婚中年ひとりぼっち社会』 (イースト新書,2020年)(Kindle の位置No.1068-1070)

引用文中に“締め切り感覚がないまま”とあります。こちらが問題です。若い人たちが妊娠・出産についての正しい知識を持っていれば、結婚・出産のタイムリミットを意識せざるを得ないはずですが……。(後述)

目黒区ができること

未婚化が進む背景にこのような事情があるとしても、「① 経済的な問題」に対して必要なのは国単位での大規模な経済政策や雇用政策ですし、「② お見合い結婚→恋愛結婚への変化」については行政が干渉する余地がない、というようになかなか区単体でできることは多くありません。

とはいえ、目黒区は今後も出生率1.50を目標とし続けるとのことですから、少子化の主因=未婚化に手をこまねいているわけにはいきません。そこで私が議場で提案したのは、「❶若い世代への経済的な支援」と「❷妊娠・出産に関する周知啓発」です。

❶ 若い世代への経済的な支援

前述のように経済的な支援策は基本的に国政マターとなります。が、目黒区でも何かできる余地はないでしょうか。若者を経済的に支えることで、将来生活の不安を和らげ、結婚を促す施策です。

1)奨学金

例えば、奨学金について。現在、大学生の2.7人に1人が奨学金を利用していて、その大半(97%ほど)が返済の必要な「貸与型奨学金」となっています。(昔のように経済的に厳しいが優秀な方だけが利用しているわけではなく、今の学生にとっては当たり前のものです。)

独立行政法人 日本学生支援機構「奨学金事業への理解を深めていただくために」

ただでさえ若者の雇用環境は昔に比べて厳しいのに、社会に出る前から多額の借金を抱えている状況ではなおさら、パートナーとの交際や結婚、出産等に対して前向きに考えるのは厳しいのではないかと思います。

こうした課題意識から、例えば足立区では借入総額の半額(上限100万円)を助成する制度が設けられています。またほかにも様々な自治体が独自で奨学金返還助成を行っていて、独立行政法人 日本学生支援機構のHP内「【地方創生の推進】市区町村における奨学金返還支援制度」に自治体の一覧が載っています。

足立区HP「足立区奨学金返済支援助成」

一方目黒区では私立高校に通う学生に対しての奨学金がありますが、返済が必要な貸与型。足立区のような返還助成はありません(しかも同じようなことを東京都私学財団が「東京都育英資金貸付事業」という形で行っていますからね…)

目黒区HP「目黒区奨学金制度」

なお、東京都では、介護職員の確保・育成・定着を図るため、介護職に就職した若者が在学中に借りた奨学金の返済を助成する「介護職員奨学金返済・育成支援事業」が行われています。これは目黒区民の方も使えますのでそうした分野を目指している方はぜひチェックしてみてください!

2)家賃助成

またもう一つ、経済的な支援策ということでいえば、「家賃助成」も考えられます。神戸大学の平山洋介教授は日本の住宅政策について、次のように指摘しています。

住宅システムの援助が持家取得に集中する社会では、家族向けの広さの賃貸住宅が少なく、借家居住の住居費負担が大きい。若年層のなかで世帯形成者が減少し、世帯内単身者と単身者が増える実態の一因は、世帯形成のための借家確保のコストの高さにある。(中略)結婚と出産を望む人たちが適切な住まいを確保できないのであれば、その状況を修正する政策が必要である。低家賃かつ良質の住宅を増やす施策は、世帯形成を促し、出生率を変化させる可能性をもつ。

平山 洋介「住宅政策のどこが問題か~〈持家社会〉の次を展望する~」(2009年,光文社新書) (p.283-284)(太字はかいでん)

目黒区の住宅施策は、

1,「ファミリー世帯家賃助成」

…18歳未満の子どもを育てている低所得者向け

2,「高齢者世帯等居住継続家賃助成」

…高齢者、障がい者世帯向け

の2本で、これから結婚・出産を考える若い世代に対する支援メニューはありません。ここも改善の余地アリです。

以上、例として2つの切り口をあげましたが、出生率向上にはこうした若い世代に対する経済的支援がまず必要だと考えます。

❷ 妊娠・出産に関する周知啓発

未婚化の理由の2点目に挙げた、見合い結婚から自由恋愛の末の結婚に変わってきていることについては、それ自体に区が介入する必要性は全くないと思っています。余計なお世話です。

でも、男女ともに若者の間に妊娠・出産に関する知識が不足し、妊娠・出産のタイムリミットを知らないことが、「終わりのない恋愛の繰り返し」を招いているのだとしたら問題です。例えば、

Benesse たまひよ「妊活スタートは遅くとも自然妊娠なら32歳・体外受精なら36歳がギリギリという厳しい現実」

の記事にはこんな表があります。

Benesse たまひよ「妊活スタートは遅くとも自然妊娠なら32歳・体外受精なら36歳がギリギリという厳しい現実」

子ども3人、絶対に自然妊娠で欲しいと思ったら、妊活を始めないといけないタイムリミットは23歳なんですね。かなり早いなと思いませんか?(20代で子育て未経験の私にとっては驚きでした)

ところが、こうした妊娠と年齢の関係についての知識が、日本の若者は諸外国に比べて不足していると言われているのです(2010年のヨーロッパ生殖医学会の調査では、30代以上の日本人女性のおよそ7割に、妊娠と年齢の関係についての知識の欠如が認められたと報告されている)。

ここからが区の出番です。当然ながら個々人の意思で「子どもはいりません」と判断しているのであれば、それは全く問題ないのですが、子どもが欲しいとは思いながら、妊娠・出産に関する知識がないまま時が経ってしまうということは望ましくありません。学校での性教育や20歳のつどい、婚姻届の提出時等、その他子宮頸がんワクチンの接種時でもいいかもしれませんが、様々な機会で周知啓発を強化しなければならないと思っています。

ご意見ください

以上のことを議会で主張したわけですが、区の回答はどの提案についても、「必要性は認識している。今後調査研究します。」ということで、具体的な前進は得られませんでした。

しかも自分自身でも、様々な文献に当たりながら、また、少し前まで独身だった自身の心にも問いながら、あれこれ考えて質問しましたが、どうしても「これで少子化は解決するんだ!」といった確信は持てなかったんですね。特効薬はなとしても、せめて「もっと他に若者世代が望んでいることはあるのではないか」というモヤモヤが今も晴れません。

そこで、ぜひ今お読みいただいている皆さまで「こういう支援があったら助かる」といったご意見がありましたら、お寄せください。LINE、Twitter、メール等で、24時間365日いつでも構いません。また、5月にそのための企画を開催します。めぐろ若者サミットと題して、同じ若い世代同士でお話しする会です。

私もまだ28歳。ぜひ友達と話しに行くような感覚で気軽にお申込みください(初対面も大歓迎です(^^)/)。(お申し込みはこちらから)

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