こんにちは。27歳の目黒区議、かいでん和弘です。
今回は、地震の後、電気が復旧する時に発生する「通電火災」を防ぐための「感震ブレーカー」について。前回のブログでは、目黒区が行っている「感震ブレーカー設置助成制度」には問題点があること、その結果、1年でわずか4件しか使われず、このままでは対策が終わるまでに40年(あるいは500年?)かかる、ということを指摘しました。
今回はその後編。じゃあどうすればいいの?というところから話を始めようと思います。
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私の主張
私は、3月の議会で、こう提案をしました。
「感震ブレーカーは、補助ではなく無償配布にできないか?」
とにかく、地域を火災から一刻も早く守っていくためには、区民からの申請を待って補助するよりも無償で全員に配ってしまった方が早いのは間違いありません。ただし予算には限りがあり、ここに大きな金額をかけるわけにはいかないのも承知しています。それならば、1件当たりの支出額を、今までの数万円からもっと安く抑えればいいのでは?
こう考えた私が目を付けたのは、「”簡易型”感震ブレーカー」というタイプでした。
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「簡易型感震ブレーカー」とは?
名前の通り、簡単な仕組みで揺れを感知し、ブレーカーを落とすグッズで、値段は安価、工事も不要で、自分自身で簡単に取り付けることができます。例えば…
① 感震ブレーカーアダプター ヤモリ
ばねの作用の力でブレーカーのスイッチを落とします。3,100円。
目黒区HP「防災用品のあっせん 感震ブレーカーアダプター ヤモリ」
② 電源遮断装置スイッチ断ボール3
おもりが落下する力でブレーカーのスイッチを落とします。2,400円。
目黒区HP「防災用品のあっせん 電源遮断装置スイッチ断ボール3」
この2つの「簡易型」については、区の「設置助成制度」の対象外となっています。しかし一方「防災用品のあっせん」という、区の行っている別の制度を使えば、割引料金で購入することができるようにもなっています。つまり区としても購入してもらえるよう取り計らっているということです。
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じゃあこの「防災用品のあっせん」制度によって、「簡易型感震ブレーカー」の普及は進んでいるのでしょうか、というと…
表の通り、大変残念な状況です。
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私の案のメリットは?
つまり、現在は「設置助成制度」で「高い」感震ブレーカーを、「あっせん」制度で「安い」感震ブレーカーをオススメしているものの、どちらの普及も進んでいない、と。
それなら、両者のいいところどりをして、「設置助成制度」で「安い」感震ブレーカーを扱ったらいいのではないでしょうか、というのが私の主張です。
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これによってどうなるか、といいますと…
① より多くの家庭に普及できる
街を火災から守るには、「点」ではなく「面」で対処していく必要があります。今までは1件あたり5万円~8万円かけて補助していたものを、1個3,100円の製品の無償配布に切り替えることで、同じ予算内でより多くの家庭にアプローチすることができます。(同じ250万円の予算で考えると、今までは年間50件が限界でしたが、この方法なら年間806件対応できる計算です。)
② より早く普及できる
年間806件のペースで配布できれば、危ない地域に建つ木造住宅2,000戸に、3年間かからずに合計620万円で配布しきることができるわけです。(今までは40年ほどかかる計算でした。)
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これは、私の思い付きからの提案ではありません。実は23区のなかでも8区で、簡易型感震ブレーカーの無償配布を行っています(杉並区、豊島区、北区、台東区、墨田区、荒川区、足立区、葛飾区)。
地図を見てお気づきの通り、下町と呼ばれる地域に属している区が多く、まさに火災の延焼への危機感を強く持っている区こそ、無償配布を行っているのがわかります。この“感震ブレーカーの普及”は、「個人や個人の財産を守るためのサービスとしてやっているんじゃないんだ」と、「地域全体を救うために不可欠なこととしてやっているんだ」という覚悟が感じられるじゃないですか。
目黒区の今のペースでやっていては、いつまでたっても通電火災のリスク改善は見込めませんし、もしも手をこまねいているうちに、通電火災を発端とした延焼が発生してしまったら、なによりも“防災意識が高く、この制度に早くから目をつけて、身銭を切って導入された方”が浮かばれません。
感震ブレーカーを一定以上の品質にこだわって少数の家ずつ対処していくことよりもまず、より多くの家に、簡易版であっても設置していただくことが大事ではないかという考えから、簡易型感震ブレーカーの無償配布を行うべきではないでしょうか。
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区の回答は?
現在あっせんしている簡易型感震ブレーカーについては、地震の後にタイミングを遅らせて電気を遮断する(つまり明るいうちに避難できるようになる)機能や、ライトをつける機能がついてないために、助成事業に加えるのを見送りました。
令和2年度については、これまでと同様の補助スキームでやっていこうかなと予定しています。ただ、それでも実績が伸びないようであれば、他区の実績なども踏まえて、御提案いただいた無償配付も視野に入れて、制度の見直しを検討していきたいと考えております。
比較的前向きな答弁をいただけたでしょうか…?
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簡易型のデメリット
確かに区役所の言う通り、簡易型感震ブレーカーは、揺れを感知した“瞬間”に電気のブレーカーを落とすため、照明等も瞬時に消えてしまいます。これだと、夜間に地震が来た時には、照明が真っ暗になってしまい、避難が難しくなるという問題点があります。
確かにそれでは危ないので、こんな製品も。
〇 充電式懐中電灯 光ルヤモリ
コンセントに常時差し込んで置き、停電を感知すると光ります。4,800円。
目黒区HP「防災用品のあっせん 充電式懐中電灯 光ルヤモリ」
これもあっせん品に入っているのですが、昨年度の購入実績は1件。
他にも巷にはランタンがたくさん売られています。そうしたものもセットで無料配布したらどうでしょう。
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議場ではほかにも、
・申請方法が煩雑。簡単になりませんか?
・地域防災計画には東京電力さんが1件ずつ見回って送電を開始しますと書いています。もしこれが本当なら、通電火災ってそもそも起こらないのではないですか?
・ブレーカーへの取り付けは高所での作業になります。高齢者など取り付けに不安な方はシルバー人材センターに代行してもらえるように連携できませんか?
といった提案をしました。その模様は、目黒区の区議会会議録閲覧・検索システムで「感震ブレーカー」と検索いただき、令和 2年 予算特別委員会(第4日 3月11日)の分からご覧ください。
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街を火災から守る。そのためには繰り返しになりますが、「点」ではなく「面」での対策が必要です。
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