こんにちは。27歳の目黒区議、かいでん和弘です。
今回のテーマは、私たちの税金が、“カラオケのために”使われていた、という話です。
「何それ?何のために?」
「何それ?」と思いますよね。私もこの話を初めて聞いたとき、耳を疑いました。
結論を言ってしまいますと、区内24か所の「老人いこいの家」に、1施設1台ずつカラオケ機が導入されていて、高齢者の皆さん、特に主に老人クラブの皆さんがカラオケを楽しまれている、ということです。
(※)老人クラブ
健康増進や介護予防、教養の向上などによる生きがいづくりなどを実施している。区内に40団体。写真はその活動場所となる「老人いこいの家」。
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置いてあるのは、DAMとJOYSOUNDの通信型カラオケ機(私でも知っている2大ブランド!)。24時間、自動で最新曲を同期してくれる、本格的なものです。
では、なぜそんなところに置かれているのか? 目的は主に3つあるようです。
①老人クラブの会員増
②介護予防(認知症予防)
③地域交流
当時の議事録を見てみましょう。2016年の青木区長の発言を見ると、どうやら老人クラブからの要望に加え、“区議会”からも強い要望があったようですね(平成28年当時、私は居なかったのでわからないのですが、確かに前年度に複数の議員さんからカラオケ導入の要望が出されています)。
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「導入してみてどうだった?」
では果たしてこの事業は正解だったのでしょうか。まずはこのカラオケ機が実際どれだけ使われているのかということを、「歌われた曲数」から見てみます。
ひと施設ひと月当たりの平均曲数です。データが残っている2019年7月~2020年2月の期間中、だいたい200曲前後歌われていることが分かります。月200曲ですから、週平均45曲くらいといったところでしょうか。結構使われているんだな~って思いますよね。
ただ、もっと深堀して調べてみると2つの問題点に気がつきます。
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問題点① 地域差が大きい
全体で見れば月200曲でも、施設によって結構差がありまして……。最も利用頻度の低い施設では月に5曲しか歌われていない月もありました(週1曲ペース!!!)。これはコロナ期間中の数字ではありません、コロナ前の平常時の数字です。(その月だけ突然変異的に低かったわけではなく、他の月や施設でも、5曲、15曲、26曲、35曲…といった数字が並んでいます。別施設では500曲以上歌われていたりしますから、かなり大きな地域差があると言えると思います。)
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問題点② 使っていない時間が多い
ただ、やっぱり数字だけでは現場で実際どのように使われているかは分かりませんよね。そこで、とある地域の老人クラブにヒアリングしました。すると、その老人いこいの家は月300曲前後と、区平均よりも多く使っている施設ですが、使用するのは平日の週3日、しかも午後1時から4時までの間のみということが判明!
つまり、休日を含む週4日は全く使っていませんし、使用している3日間も、午前中や夕方以降は、ただ置いてあるだけなんです。(しかも24時間最新曲を同期するので、電源プラグを抜くことは不可。電気代は消費し続けるという…)これは無駄では……??
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このように、月平均200曲使われているとはいえ、改善点が目につきます。
「目的が達成されたのならいいのでは?」
では、このカラオケ機導入によって当初の目的は達成されたのでしょうか。先に3つ挙げた導入目的のうち、「②介護予防がどれだけ実現できているか」と、「③地域交流がどれだけ進んだか」という2点は評価のしようがないので、①の老人クラブの会員数がどうなったかという事を見てみます。
確かに、区長が意気込んでいた通り、会員数は増加(微増)していますね(ただしカラオケとの因果関係は不明)。なんでも、23区で唯一会員数を増やしていたことから、東京都老人クラブ連合会の表彰も受けたそうです(!)
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コロナが直撃…
ただ、不運にもそこへコロナが直撃、状況が一変しました。まず、毎月200曲前後で推移していた利用曲数は、2020年3月以降激減し、今日に至るまでほぼゼロ行進が続いています。
さらに会員が順調に増えていた老人クラブは、
こちらも急落してしまいました。まあ嫌味なことを言えば、そもそも会員数はコロナ前でも4,000人前後。目黒区内の高齢者人口は5万5,000人ですから、全体の13分の1以下の限られた人数の中で、上がり下がりしているだけです。どちらにしてもこのカラオケは、あくまで高齢者のごく一部の方のみが恩恵を受けているサービスであるということは変わりありません。
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「どれくらいのお金がかかっている?」
では一体、いくらの税金がかかっているのでしょうか。このカラオケ機、目黒区は「買い取り」ではなくて業者から「リース(レンタル)」して調達していますが、その総額は…
60か月で1,623万円。つまり1年あたり 324万円、1月あたり 27万円にも上ります。
まぁこれは24台の総額で、1台1か月あたりのレンタル料は1万円程度ですから、法外に高い値段とはいえません。でもやっぱり、チリツモだと無視できない金額になりますね。そしてこのリース契約、今年の11月に契約期間が満了予定で、役所としては再度入札し、12月以降も借上げようと考えている、とのことでした。
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「え!ちょっと待った!!」
以上の点を踏まえ、決算特別委員会で2点、ツッコミを入れました。
① 再契約を保留すべきでは?
「ここ1年間、コロナの影響によって、カラオケ機をまともに使えていない状況です。さらに、『ワクチンの抗体価が半年で大きく落ちる、3回目の接種も必要だ』と言われるなか、いつになったら“カラオケ機”を“カラオケ用に”使える状況になるか、見通せる状況にありません。せめてコロナが落ち着くまでは、再契約を保留すべきではないでしょうか。」
② そもそもこの事業を見直すべきでは?
「そもそもこの事業には不公平や無駄が多いと感じています。
Q,なぜ高齢者だけ区の税金で無料でカラオケが楽しめるのか。
Q,なぜ老人クラブに入っていないお年寄りの方は使えないのか(厳密に言えばだれでも使えますが、老人いこいの家の中にあるので…)。
Q,使用していない時間があまりに多く、もったいなくないか。
私も、ぜひカラオケを無料開放することで、地域交流の増加、介護・認知症予防等につながればいいなと期待はしています。ただそれでも、年324万円を支出するこの事業の現状、費用対効果には納得できませんので、事業の見直しが必要だと思います。
例えば、すべてのいこいの家に設置するのではなく、使用率の低いところ同士で1台を共有すればもっと効率化できます。あるいは、いこいの家ではなく住区センターに置いて、高齢者の方が使っていない時間帯に一般の方もご利用いただくことも考えられます。
やはり税金を原資として、若い世代も含めた全員からのお金で運営している以上、効率性の視点、公平性の視点をもって事業の見直し、改善を求めたいと思いますが、如何でしょうか。」
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「区の回答は?」
私の指摘に対する、区の回答を載せます。(高齢福祉課長の発言を文意を変えない程度に要約)
① 再契約を保留すべきでは?
目黒区「このカラオケ機には介護予防にも資する(トレーニングなどの)機能も付いている。実際に利用者の方から、虚弱になって転倒を繰り返すようになったという話を伺っている。最近コロナが落ち着いてきたなか、ここで一回切れてしまうのはよくない。予定通りリースの再契約をしたいと考えている。」
ん????
いやいや、介護予防を行ってもらいたいということならば、目黒区が推している「めぐろ手ぬぐい体操」をやってもらえばいいですよね(無料ですし)!!! わざわざ月27万円も払って“カラオケ機”で体操をやってもらう必要ないじゃないですか!!!
② そもそもこの事業を見直すべきでは?
目黒区「効率性・公平性の観点や、各世代の方が利用できるということも重要。ただ、高齢者には毎日の活動が精神的・肉体的にも大きく影響を与えるので、高齢者の方の使うのを不公平という風には言えない。(←文意がつかめず…)。また、(老人いこいの家に置いているものの)老人クラブだけが使える制度というわけではないが、今後の使い方については改善の余地があると思っている。」
途中文意がつかめない部分もありますが、こちらは改善が見込めそうです。
質問時間が尽き、更なる追及ができなかったこともあり、結局私の主張は一勝一敗という形で終わっています。
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最後に
ここまで長々論じてきた本件、皆さんの中にはこう思われる方もいるのではないでしょうか。
「こんなのはあくまで年間300万円程度の事業。年間1,000億円を超える目黒区の予算の中では、ごく小さな問題ですよね?」
はい、おっしゃる通り。私も、そのことは自覚しています。
でもですよ、今の政治は一事が万事、こういう費用対効果を度外視した、過度に“高齢者に手厚い”事業がまあ多いんです(過去記事も参照)。こういった小さな問題から一つ一つ解消していかなければ、若年層の政治不信・政治離れはいつまでたっても解けません。
だからこそ私は、たとえ小さなことでも「不公平はおかしい」と声を上げねばならないと思っています。目黒区唯一の20代議員として、これからも精進します。
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