こんにちは。32歳の目黒区議会議員、かいでん和弘です。
前回のブログでは、目黒区が新たに開始した豪雨対策をご紹介しました。
目黒区内で2025年7月と9月の大雨で400件以上の浸水被害が発生したことを受けて、いざ氾濫が発生しても被害を少なくするための取り組みを充実させました。しかし私は、「氾濫そのものを防ぐために、区にはまだできることがある」と考えています。
先日、議会で屋根に降った雨水をためる「雨水タンク」の設置助成制度をテーマに議論しましたので、その模様をご報告します。

機能していない「雨水タンク設置助成」
目黒区には、「個人宅で雨水タンクを設置する際、費用の一部を助成する」という制度があります。「5万6,000円 or 工事費用」のいずれか低い方が、区から助成されるというものです。

この制度のねらいは、各家庭で雨水を一時的に貯めることで、下水道や河川への急激な流入を抑え、氾濫リスクを下げることにあります。
しかしこの制度には大きな「壁」があります。
助成の要件が、”原則として「浸透ます」や「浸透トレンチ」とセットで設置すること”とされていて、使いにくいんです。

もしも雨水タンク単体なら、下の動画のように(のこぎりさえ扱えれば)一般の方でも割と短時間で取り付けられるんですが、
セットで設置が必要な「浸透ます」や「浸透トレンチ」は雨水を地中へしみこませる装置ですから、取り付けには地面を掘り返す工事が必要になります。
そうなるとなかなか気軽に設置できませんよね。自然、この制度の利用者は、新築で家を建てる方が中心となっているのだそう。
これにおそらく「知名度不足」も相まって、年間の助成件数はなんと平均1.7件(H27~R6)と、ほぼ機能していません(←28万人も区民がいるのに一桁は厳しい……)。

評価の分かれる雨水タンクの価値
ではそもそも、雨水タンクを付けるとどんな良いことがあるのでしょうか。
よく言われるのは次の3点です。
① 川へ流出する水量を減らせるので水害対策につながる(治水)
② 溜まった雨水をガーデニングや洗車に使える(エコ)
③ 災害などの断水時にトイレなどの生活用水として使うことができる(防災)

一方で、肝心の水害対策については疑問視する声もあります。
・「これから本降りになるぞ」というピークの“前”に満杯になってしまい、水害抑止に全く寄与しないこともある
・設置者がきちんと水位を管理して、降雨前に水を抜いておいてもらわないと意味がない
という難点に加えて、そもそも水害対策全体から見たときに、タンク1台あたりの標準的な容量(200L)はあまりにも“ちっぽけ”なんです。

上の図のように目黒区の各河川流域では数万㎥分の流出抑制(川に水を流さない対策)が必要なのですが、タンクは1台200L=0.2㎥でしかなく、1台設置しても目標の数十万分の1というレベルに過ぎません。

ではこのように評価の分かれる雨水タンクを、目黒区はどう評価しているのか。区が2021年に策定した『豪雨対策計画』には、次のようにあります。

引き続き、各家庭における雨水タンクの設置など、雨水利用が進むよう取り組んでいきます。(P33)
民間施設の雨水タンクの設置は、(…中略…)草花への散水に利用できるほか、地下に設置される雨水貯留・浸透施設とは異なり地上に設置されるため、区民も目にすることができるので豪雨対策の普及啓発が期待されます。今後は、助成制度の拡大を検討するとともに普及啓発に努めていきます。(P40)
かなり肯定的に評価していることが分かりますね。
タンク単独に助成を
ところで、昨年10月、私は委員会の視察で宮崎県都城市を訪問しました。

都城市は雨水タンク“単体”の設置に対しても補助しておりまして、人口は目黒区よりも10万人以上少なく、また補助上限は5万円と目黒区(5万6千円)よりも低い(=自己負担が大きい)のですが、昨年度は1年間でなんと99件も使われて、市内合計で2万1,000L分の雨水貯留量を確保したとのことでした。

目黒区でも、雨水タンク設置のハードルを下げられれば、もう少し制度が使われて、より水害に強いまちになるのではないか。そう思った私は、「目黒区でも、浸透ますとのセットだなんていわず、タンク“単独”の設置に対しても助成が下りるよう、制度を見直すべき」と提案したのでした。

なお、この提案は別に「新たな事業をゼロから作ってください」ということでは無いですし、「予算を増やして」と言っているわけでもありません。単に、「今の枠組みはそのまま、雨水タンク単独補助も認めてはいかがか」というだけで、区の要綱を少し変えれば実現できるものです。
「こんなことは二つ返事で認められるんじゃないかな、わざわざ議場で取り上げるまでもなかったかな」なんて思っていました。
しかし区の回答は…
雨水タンクの助成実績は、平成28年度の助成開始以来、累計で約4,400L、すなわち4.4㎥にとどまっています。このため、雨水流出抑制効果には現実的な限界があります。
このような状況を踏まえ、区では、雨水タンク単独の助成については、引き続き他区の取組や流域対策に関する情報収集を行い、調査研究を進めてまいります。
後ろ向きと言ってもいい反応です。

伝わらない「再発防止」への決意
確かに雨水タンクの水害対策に果たせる役割はごくわずかです。けれども、2度の大雨で400件の被害が発生してしまった情勢下ならば、私は、区長として、「来年同じ被害を起こさないためにも、できることは何でもやる」という姿勢を示すべきだと思います。
また、水害対策のみならず、断水時の雑用水として使用可能という防災面、あるいは雨水の有効活用といったエコの面での利点もあります。そうであるならば私は、合わせ技一本で、タンク単体での助成も認めることに合理性があると思うのです。
ただその反面で、区から「思い切ってタンクの助成をやめます」という真逆の回答が来たとしても、私は受け入れるつもりでいました。
つまり、「タンクの効果は小さいからやめる代わりに、止水板助成などの“あふれた後の被害予防”に予算を集中する。区民の皆さんも我が家を守る“自助”に集中してほしい。その方が被害件数を抑えられるんだ。」と、こう言い切るならば、それはそれで筋は通っていると思います。(実際、23区内でも「雨水タンク助成を近年取りやめた」というところもいくつかあります。)
しかし実際の答えは、“調査研究”、つまり「これから調べます、それまで現状維持です。」というもの。浸水被害を受けた区の長としての、再発防止への“決意”や“スピード感”が、伝わってきません。
縦割り意識がPRをゆがめる
さらに問題なのは、この雨水タンク助成制度に関するPRの仕方です。区のウェブサイトで、どう案内されているかというと、
“水害の防止及び水害による財産被害を軽減することを目的とし、流域での治水対策を推進するため”に助成しますとのこと。

でもそもそも、「雨水タンク」や「浸透ます」に、“設置者宅を水害から守る効果”はあるのか。
答えはNOです。
多くの人が設置すれば、下流域の水害を抑制できますが、我が家1軒がタンクで雨を溜めたとて、家の周辺地域が水没するときには為す術なく水没します。

そのような水害対策において「共助的な」性質のものを「水害対策のために設置を」とPRしたって、わざわざ導入する人はいませんよね。
本当はハザードマップの白い(氾濫の危険が無い)エリアの皆さんにこそ設置いただきたいのです。上流に降った雨を流さないことが、下流域を救います。だからこそ、「水害対策になるから設置して!」では上流域の皆さんに響きません。

制度の趣旨や所管云々は脇に置いて、「水道代の節約になる」とか、「断水時も雑用水に使えて安心」などといった、取り付けるその人にとってのメリットこそをPRする必要があります。このことについても改善を求めました。区長の答弁(要約)は、
PRは言うまでもなく、水害は水害の所掌事務ですが、危機対策を検討する部局会議は部課長全員が出席しておりますので、常に全体で考えておりますので、1所管に任せていません。全体としてしっかりと捉えていくというのはそのようにしっかりと対応しておりますし、これからもさらにしていきたいと思っています。
”しっかり対応”できていないから指摘したのですが、かみ合いませんね。そして議会でこのやりとりをしたのは昨年11月でしたが、執筆している4月時点でもPR方法は従前のまま。結局しっかり対応していないじゃないですか……
都市整備部(治水担当)の事業を、危機管理部(防災担当)や環境清掃部(エコ担当)的な観点でPRするということすらも進まない「縦割り組織」が、今の目黒区なのです。

正直今回のブログは、「誰が興味あるんだろう」という地味なテーマでした(自覚あり)。しかし、こうした小さな積み重ね(1台200Lの積み上げ)こそが、400件の浸水被害を繰り返さないための第一歩だと信じています。
もしもブログをご覧いただいて、「我が家にも雨水タンクをつけてみようかな?」と思われた方がいらっしゃれば望外の喜びです。どうぞご検討ください。
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