こんにちは。27歳の目黒区議、かいでん和弘です。
去る8月に、区民の方とオンライン上で意見交換を行う“めぐろサミット”という企画を実施しました。
第1回は、「産前産後にどんな支援ができるか」について。手探りのなかでの開催ではありましたが、5名の方にお越しいただき、多くのご意見を承りました。それらを踏まえ、9月の決算特別委員会で「妊産婦さんへの支援」について議会質問を行いましたので、その模様をご報告します(今回は前編)。
今回のテーマは、「妊婦健診」負担大きい問題についてです。
助成回数には上限アリ!
妊娠~出産までのお母さんと胎児の健康を見守るのに欠かせない「妊婦健診(妊婦健康診査)」。目黒区では、母子手帳と一緒に渡される水色の受診票(上図)を医療機関に提出することで、健診費用の補助を受けることができます。ただし、その回数には上限がありまして…
区では、「健康診査14回分までしか、費用助成をしませんよ~」と決めています。この14回という数字は、厚生労働省が示した「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」のなかで、“14回程度”とされていることに由来するものです(下のリーフレット、表の2段目の健診回数の欄をご覧ください)。
厚労省の想定では、1回目の健診を妊娠8週に受けたのち、妊娠初期は4週間に1回、中期は2週間に1回、後期は1週間に1回受診すると計14回になるという見積もりですね。(うん確かに、その想定通り順調に行けば、14回になりますが……)
実際に起こっている話
ただ実際には、妊婦健診が14回の枠内で収まらず、数万円から中には10万円以上の持ち出しを余儀なくされるご家庭も少なくありません。2つの例をご紹介します。
Case 1 : 不妊治療を行っていた方の場合
この方は妊娠前からこまめに通院していたために妊娠が判明した時期が早く、厚労省の想定する8週目よりも前から健診を受け始めました。そうすると、最後の数回が14回を超えてしまい、結局その分を全額自費で受診することとなったそうです。
Case 2 : 切迫早産の兆候が見られた方の場合
この方は、妊娠中期であれば2週間に1回の健診で良いと厚労省が想定しているところを、切迫早産の兆候が見られたため、お医者さんから「1週間ずつ刻んでみましょう」と言われました。結果、14回では足りなくなってしまったそうです。
118自治体で拡充!
こうした状況は、なにも目黒区だけで起きているわけではありません。全国的に晩産化が進む中、妊娠・出産にあたってよりこまめな健診を必要とする方が増えてきています。そんななか、いくつかの自治体では妊婦健診をためらうことなく受けてもらえるよう、支援を手厚くしておりまして……
上の表の通り、妊婦健診の公費助成回数(役所が補助をする回数)について、(いまだ大多数の自治体では14回ですが、)基準を引き上げている市町村もすでに118にのぼっています。
(例:福島県南相馬市 回数無制限で助成)
さらに福島市のように、産後の健診まで助成対象としているところもあります。
(例:福島県福島市 妊娠中15回と産後2回分の健診費用を助成)
以上を踏まえ、目黒区でも妊婦健診の公費負担回数を拡充すべきではないですか、と質問しました。
エコー検査も拡充を!
さらにもう一問、同じく妊婦健診について、超音波検査(いわゆるエコー)に関しても回数の拡充を求めました。
胎児の形態や生理機能の観察を行うための検査で、病院によってほぼ毎回の健診で実施するところから、一般超音波検査と精密超音波検査をそれぞれ1回ずつ行うところなどさまざまですが、基本的に1回のお産のなかで複数回行われることの多い検査です。
ここで、先にもお示しした厚生労働省の「標準的な“妊婦健診”の例」をご覧いただきたいのですが、
この中で資料下段を見ていただくと、超音波検査は妊娠初期に2回、妊娠中期に1回、妊娠後期に1回の計4回、「必要に応じて行う医学的検査」と位置付けられています。
しかし!
現状、目黒区の公費負担は超音波検査“1回分”しかなく、2回目以降は自費で受けざるを得ません。これっておかしくないですか?
他の自治体を見てみると、23区では、5つの区で2回分まで、2つの区で3回分まで助成していますし、全国で見れば高知県高知市ではエコー7回まで、北海道の池田町では11回まで助成しています。
こういうところに、市長/区長の子育て支援に対する熱意があらわれているような気がします。悔しいです……。ぜひ目黒区でも、エコーの公費負担回数を増やせないかと質問しました。
後ろ向きな区の回答…
妊婦健診について
平成27年に厚生労働大臣により示された「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」の中で、一人の妊婦さんが出産までに14回程度行うということが示されていて、その費用を区市町村が負担すると明記されています。
現在、東京都内の全区市町村においては14回分を公費負担として受診票を配布しています。そしてその負担額は、東京都地域保健事業連絡協議会(5者協/都や医師会、区市町村等で話し合う)によって決定しています。
全国レベルでみると14回を超えて公費負担としている自治体もあることは承知していますがまだ少数派です。自治体の規模や財政状況、それからそれぞれの事情によるものではないかなと理解しています。
こうした状況において、目黒区が独自で妊婦健診、望ましい基準とされる14回を超えて費用負担を拡大することは現在考えていません。
エコー検査について
確かに、超音波検査については国が示す基準において妊娠期間中4回実施ということを示しています(ただし4回分の公費負担を求めているものではない)。現在、目黒区を含む16区が1回、7区が2回から3回の費用負担を助成しているという状況ですので、他区の状況も踏まえながら今後の研究課題とさせていただきます。
どちらの回答も、ほぼ「やる気ありません」と言っているようなものです。
私はこう思う(反論)
区の見解に反論させてください。まずは順番が前後しますがエコー検査について。
区は妊婦健診の回答で「望ましい基準とされる14回を超えて費用負担を拡大することは現在考えていません。」と言って否定していますよね。いやそれならば、同じ「望ましい基準」の中でエコー検査は“4回”とされているわけですから、それに沿った対応を取らねばおかしいはずです。答弁に一貫性がないと思います。
そして、もう一点私が気になったのは、妊婦健診に対する答弁の中の、「それぞれの事情によるもの」という部分です。
確かに、そうかもしれませんね。それぞれの自治体の地域性、区長(市長)の考えには多少なりとも差があるでしょう。
ではじゃあ、区役所は目黒区の事情・状況を把握しているのでしょうか。「財政的に余裕がなくて云々…」だけでなく、目黒区内に妊婦健診の助成拡大を望む方がどれくらいいらっしゃるか、分かっているのでしょうか。
答えは否です。区ではそのようなデータを取っていません。ニーズがどのくらいあるのか分からないまま、なぜ「行わない」と断定できてしまうのでしょうか。
他の自治体では、やっています。例えば、今年から妊婦健診を17回まで助成することにした大阪府東大阪市では、公費助成を拡大すべきかどうか検討するにあたって実態調査を行ったそうです。その結果、約15%の妊婦さんが、14回を超えて健診を受けていたと判明し、助成拡大に踏み切りました(目黒区もこの15%という数字から大きく外れることはないのでは、と思っています)。
そこで再質問として、「すぐに助成を拡充しますと言えないのはいいとしても、せめて実態調査を行い、必要性があるのかどうか判断すべきではないですか」と主張しました。
国の指示待ち…
私の再反論に対する区の回答は…
妊婦健診の実態調査ということで東大阪市の事例を挙げていただきましたが、妊娠の状態は本当に個別性が高いものです。頻回に受診しなければいけない方もいらっしゃるし、14回全部使わないという方も実際いらっしゃいます。
私どものところに14回では足りないというご意見は、今のところそう目立って受けていないというのが現実です。そういったことで、目黒区だけで実態調査をやることが果たして有効なのかな?ということを思っています。
たとえば多胎妊婦に関しては、明らかに頻回に妊婦健診を行うことが推奨されているということから、この9月から一部費用助成を上乗せしましたが、今後も国の動きを見ながらこういった助成制度の拡大については研究してまいりたいと思います。
“声なき声”は伝わらない。
どうですか?あまりにつれない回答と言いますか、正直聞きながらムッとしてしまいました。現にお困りの方からお声を頂いているからこうして私が提案しているのに、役所へ直接寄せられた声が多いかどうかで決まってしまうのか……と。“声なき声”を拾う努力もせずに、「意見が寄せられていないからやりません」なんて、それは怠慢以外の何物でもないと、私は思います。
同時に、皆さんにもお伝えしたい。日常で何か不便に思うことがあったなら、それをぐっとこらえて我慢しないでください。役所は“声なき声”を拾えません。問題があることすら、認識できないんです。
ぜひ、どんなに小さなことでも、区役所に、あるいは議員に伝えてくださいね(役所に届かない“声なき声”を見つけ出し、拾っていくのが私たち議員の役目ですから、メールやSNSでいつでもご相談に応じさせていただきます)。
ただ今回の件について、本当は役所に声を伝えていただきたいんですが、妊婦健診担当の保健予防課は現在もなおコロナ禍の対応に追われています(厳密にはコロナ対応を担っているのとは別部署ですが、同じ保健所内で応援の職員派遣をしており、余裕は全くありません)。ですからそこにこの件で電話を入れるのは(今は)ご遠慮いただきたいと思っています(お願いします)。
そこで、その代替手段として、「区長へのメール」という方法をご紹介して本稿を終わりにします。これであれば、区長、そして担当に意見は届きますので、ぜひ本件、拡充してほしいと思われる方は、こちらで試してみてください。
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