こんにちは。27歳の目黒区議、かいでん和弘です。
今回のテーマは「保養所」について。……平成5年生まれの私には、「そういえば昔、中学生か高校生の頃に“かんぽの宿”ってニュースでよく言っていたなぁ」程度で、どうもピンとこないんですが、一応ウィキペディアではこう説明されています。
「保養所とは、企業や健康保険組合などが、社員の研修や保養などに用いるために作られた施設である。……主にリゾート地に作られることが多く、運営する企業の社員や組合員は、普通料金より割安な料金で利用できることが多い。」(Wikipedia「保養所」)
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その保養所について、目黒区では2021年3月現在、2か所の「契約保養施設」と43か所の「協定保養施設」を確保しておりまして(違いは後述)、区民の方とその同行者はこれらの施設に優待料金で泊まることができます。
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さて本ブログで考えたいのは、「保養所の必要性があるかどうか」についてです。
まずは下の表をご覧ください。これは区の資料から抜粋した、区の保養所事業決算額の推移なのですが、過去4年を振り返ったところ、この事業実施のために毎年税金から200万円以上も支出しているんです。私も、こうした保養所を無料で運営しているなら何も言うことはないんですが、税金を使って行っているとなると話は別。少しの間、私の主張にお付き合いください。
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保養所をめぐる経緯
いきなり昔話から入りますが、もともと目黒区には、伊東保養所(静岡)と箱根保養所(神奈川)という2か所の“区立”保養所がありました。これらは、区が建物を保有し、運営もすべて区が直営で行う体制でしたので、それはもう今とは比べ物にならないくらい多額の費用が掛かっていました。
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例えば平成23年度(2011年度)の箱根保養所の収支を見てみますと、年間の運営経費が約1億9,100万円に対して、使用料収入等が約6,900万円ということで、差し引き1億2,000万円もの赤字を“毎年”生み出してしまっていたんです。
当然そんな状態が長く続くわけもなく、伊東の保養所は老朽化などの問題もあって平成14年度(2002年)末で閉鎖、残る箱根保養所についても、平成23年度(2011年)末をもって廃止されることとなりました。(当時の目黒区はいわゆる「目黒ショック」と呼ばれる財政危機に直面しており、自前の施設で維持管理している余裕がなかったのです。)
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ただそうはいっても、いきなり保養所が無くなると区民の方も不自由だろうということで、直営施設のもともと位置していた箱根と伊東の地で経営していた民間旅館と契約を結び、目黒区民に優先的に使ってもらえる部屋を確保したのでした。(これが「契約保養施設」です。)
開始当初は箱根町に3カ所、伊東市に1カ所の計4か所でスタートし、その後、減少していって現在は箱根と伊東に1か所ずつの計2か所の旅館があります。この2旅館のそれぞれ3室分の部屋を目黒区の方でおさえて区民が優先利用できる契約を結んでおり、さらに宿泊料金についても、大人は正規料金から3,000円引きで泊まることができます。
そして、この3,000円の割引分を目黒区から旅館に支払っているので、泊まる人が増えれば増えるほど、区の持ち出し分も膨らみます。コロナ前、令和元年度の年間利用者数は1部屋当たり133人、部屋の稼働率は平均9.0%で、区が旅館に支払った補助総額が233万円でした(稼働率9.0%って、あまりお客さん来ていないなぁ)。
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“もう1種類の”保養施設
さて、箱根保養所が閉鎖されてから5年後、当初は箱根と伊東に4か所あった契約保養施設も数が減ってしまったこともあって、区民の方から「施設数を増やしてほしい」という声が寄せられたそうです。そこで区では平成28年、もう一つの保養施設である「協定保養施設」を追加しました。下の画像がリストです。
この「協定施設」が先の「契約施設」と違う点は何かというと、【区民の方は優先予約や割引料金などの優遇が受けられて、しかも目黒区の負担はゼロ】ということ(!)です。つまり、現在目黒区では43の協定保養施設を確保していますが、それらの施設を区民の方に何回(割引価格で)利用していただいても、区から旅館へのお支払いはしなくてよいのです。そんなことができるんだったら、絶対そっちの方がいいですよね!
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以上がこれまでの目黒区の保養所をめぐる流れと、「契約保養施設」と「協定保養施設」との違いです。これらを踏まえて改めて、この保養施設事業にどれだけのお金がかかっているか、先ほどよりも長いスパンでご覧ください。
ぱっと見、「昔に比べればずいぶん改善している」という印象を受けると思います。確かに直営の箱根保養所を持っていた時代から比べればその通りなのですが、だからと言っても200万円だって決して安くはありませんし、この200万円の裏には、精算作業に費やした職員人件費など数字には表れてこないコストも存在するので、軽々しく見過ごすわけにはいかないなと思っています。
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私の提案
さてここからが私の主張になりますが、もうシンプルです。毎年200万円以上かけている「契約保養施設」をやめ、費用の掛からない「協定保養施設」に一本化するべきではないか、ということです。
理由は大きく2つあり、順にご説明します。
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理由① 区のやるべき必須のサービスとは思えないから
今は令和の時代。全国の旅館の情報は、ネットから検索し、そのまま予約までできてしまうのが当たり前の時代です。そんななか、果たして区役所が、まるで旅行サイトや旅行代理店のように区民の方が泊まる宿をお世話してあげる必要があるのでしょうか。
それも、経費が掛からないならまだしも、年間数百万円も使って実施しているのです。コロナ禍で区の仕事と支出は増える一方、収入は落ち込み、新年度予算は「身の丈に合っていない」と、区長も度々発言するほど目黒区の財政は切羽詰まった状況にあります。そんな状況下でもなお、この事業に税金を投入する余裕が、果たしてどこにあるのでしょうか。
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実は同じ悩みに他の区も直面しておりまして、練馬区では、“新型コロナウイルス感染症の拡大による区財政の危機的状況を踏まえ”、もともと指定していた保養所25施設を、今年度いっぱいの予約を最後にすべて終了するとのアナウンスがありました。
他にも、足立区、板橋区、墨田区、中野区、(文京区)では、保養施設を廃止しているか、またはお金を全く掛けない方法で実施していまして、目黒区もこんな厳しい時だからこそ、もっと他の、優先すべき案件にお金を集中するべきではないかと思うのです(※)。
↓廃止・無料の区
(※ 各区で名称や制度の詳細が異なるため、正確に把捉しきれていない可能性があります。ご了承ください。また、文京区は基本無料だと思うのですが、6万4千円という少額の予算が付いていたので括弧をつけています。)
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理由② 契約施設をやめたとしてもそこまで影響が出ないから
現在この契約保養施設を頻繁に利用されている方に対して乱暴な書き方になってしまったかもしれません。誤解のないよう弁明させていただきますと、私は決して「保養施設をすべてなくすべき」とは思っていません。日々様々なことを耐え忍んで生活しないといけないこんな苦境の時にこそ、旅行でリフレッシュをすることが心身の健康にとってとても大事だということは理解しています。
でもどうでしょう。そういったニーズは、わざわざお金のかかる「契約保養施設」でなくとも、お金のかからない「協定保養施設」の方だけで、十分満たせるのではないでしょうか。
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というのも、実は目黒区は23区で見たときに「保養施設」の数が極めて多い区なんです。
上の表は、23区の保養施設の多い上位10区をまとめたものですが、目黒区は23区でも3番目の施設数を誇っています。
しかも、1位、2位の板橋区、杉並区は、表外の太字にある通り、「フレンドシップ割引」や「まるごと保養地協定」という取組を実施していて、(私は「これすごくいい制度だな~」と思うんですが、)友好都市などと協定を結び、その温泉地にある旅館ならどこでも全部割引料金で泊まれる、という洒落た取り組みをしているために、件数が60件~150件以上となっているんです。(目黒区も友好都市になっている金沢市や気仙沼市、角田市とできないでしょうかねぇ。今度提案してみます。)
つまり、そうした自治体間での特殊な協定を行っていない、純粋な保養施設の数としては目黒区がトップにあるくらいの立ち位置でして、それだけ充実しているならば、2か所の契約保養施設を打ち切って施設数が43か所になったとしても、「十分区民のニーズにこたえられる」と思いませんか?
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再度提案を掲載。
3月の補正予算審議の場で、以上のような指摘をし、区長に「契約保養施設」制度の見直しを求めたのでした。
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結果は…
青木区長からは次のような答弁がありました。(要約です)
今なお23区の相当数が直営での保養所運営を行っている。目黒区だけが依然として続けているという事ではなく、そんなに飛びぬけておかしいことをやっているということでもなかろうかなという風に思います。
(かいでん注・今なお直営で運営しているのは23区中8区。保養施設の運営に4億~5億かけている区もあって、「区民の皆さんは果たしてその事実を知っているのだろうか?」と思ってしまいます。余計なお世話ですが。)
とはいえ、今かいでん委員がおっしゃったように、これは税でやっていますので、それについては特にこれから財政状況が厳しい中でもありますので、「これでいいのか」というご指摘は全くその通りだと思います。
ですから、改めてポストコロナの中でのこういった事業のありようは区政再構築の過程で俎上にあげていかざるを得ないと思っておりますので、今のご質問もしっかり受け止めて、今後しっかりとした検討を行っていきたいというふうに思っております。
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令和3年度予算には、この保養所事業に271万円分、すでに計上されていますから、見直しは早くても令和4年度以降ということになりますが、このような厳しい財政状況下では、保養施設のような「プラスアルファ」の施策よりも、真に区民の方にとって必要な事業に、貴重な“なけなしの”お金を回していくべきだと思います。引き続き、見直しを訴え続けます!
最後になりますが、私には、契約保養施設としてお引き受けいただいている2つの旅館を悪く言う意図はみじんもありません。むしろこの調査を行っていく中で、色々な方から2施設については大変よい評判ばかり聞くものですから、私もコロナ禍が落ち着いたら(この制度を使わずにでも)行きたいなと思っています。本気です笑
もう一度アピール!
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