去年の暮(悠久の時が流れた…)、所属している特別委員会の議員10名で関西(大阪市・京都市・神戸市)を視察しました。そのなかでも、神戸市のとりくみ(ICT・データを活用した公民連携)が大変興味深かったので、紹介します。
神戸市会(市議会)は市役所の最上階にあり、眺望が最高。
役所のデータ、公開します
神戸市の取り組んでいるICT活用、ハンパないです。一般に“お役所”と言えば、書類は何でも紙が中心で、ハンコの押し合い、新しいことは常に民間からワンテンポツーテンポ遅れて取り入れるような印象ですが、神戸市ではそうではありません。コンピュータを使った新しい情報処理・通信技術(これがいわゆるICT)を、どんどん政治に活かそうとしているのです。
でも「政治に活かす」って言っても、なかなかに難しい。いくらICTを活用する意思があってもやっぱりお役所ですから、最先端の技術については民間に及びません。そこで神戸市では、民間企業や市民の方も巻き込んで(公民連携)、「役所のデータをあげるから、解決策を一緒に考えてください!」(オープンガバメント)とやったわけです。
神戸市の行政データは誰でも見られる形で👇にまとまっています。
でも、これで終わりではありません。確かにオープンデータの取り組みは大事ですが、それだけなら、今では日本全国どこでもやっていますし、何なら目黒区でもやっています。
これだけでは何が問題なのかと言えば、往々にしてこうしたデータは企業や市民に相手にされないくらい粗い(利用価値のない)データだったりするのということなのです。(実際に4、5年前にもオープンデータは流行った時期があったのですが、誰にも利用されることがなかったため下火になっていました。)
そう、だからこそ神戸市では、もう一歩踏み込みました。企業と連携協定を結び、「課題解決に役立つデータを集める」ところから「ICTを使って解決する」ところまで、まるごと民間の力を借りる、ということを“全力で”行っているのです。そのプロジェクト、題して、
「実験都市 神戸」
んー、聞いただけでワクワクしてきます。市の担当者曰く、
「神戸市自身がベンチャー企業になった気持ちで、いろいろな方たちと新しいことができないか、今の課題を解決できないか、取り組んでいます。」
150万人の人口を抱える政令市が「ベンチャー企業になった気持ちで」ですよ?目黒区に欲しいのはこういう意気込みなんです~。なまじいまだに人が集まり続ける首都東京に位置しているからこそ、どうもいまひとつ、未来への「危機感」が足りないように感じます…
脱線脱線。目黒区のICT政策については次回取り上げるとして、今回は神戸市のことに専念しましょう。素晴らしい取り組みは色々ありますが、目黒区でも生かせそうなものだけピックアップ。
① 災害時の情報伝達にLINE@チャットボットの活用
連携先:LINE × NPO法人コミュニティリンク
👉こんなことをしています
地方行政に関心のある方ならご存知でしょうか、千葉市の行っているちばレポ(千葉市HP ちばレポ(ちば市民協働レポート))の災害時版です。
地震などの大規模災害が発生した時、市民の方に今いる現場の状況をラインに投稿してもらう(写真&文字)ことで、AIが自動的に「どこで何が発生したか」「どのくらいの規模か」「けが人の有無」などを一覧で整理する仕組みです。これによって、消防署や市役所災害対策本部の職員は、わざわざ現場に行かなくても市のどこで大きな被害がでているか全体像を見渡すことができ、必要なところに必要な援助を回せるようになのです。
阪神淡路大震災から25周年を迎えた今年1月17日には、1万人の参加する実証訓練を行っていて、実際の災害時にも活用できるよう取り組みを進めていくとのことです。
👉思ったこと
阪神淡路大震災の時、神戸市の職員は災害の実態把握のために現場を右往左往していたため、情報収集が大変だったという過去の教訓をちゃんと生かしています。
この、本来本部にいないといけない指揮官が現場に駆り出されてしまう状況、まさに去年の台風19号の時に目黒区の水防対策本部が陥った状況では…??
このように問題発生の報告が市民から寄せられた箇所を地図上で確認することができます。
② Bluetooth タグを活用した子どもの通学路見守りサービス
連携先:NTTドコモ
👉こんなことをしています
小学生の登下校時の安全を確保するための見守りサービスです。見守りと聞いてパッと思い浮かぶ解決策は、「GPS付きケータイを持たせればいい」ということだと思いますが、小学生に持たせるにはちょっと早いかもしれません。そこで神戸市では、子どもの居場所をトレースするためのBluetooth タグ(定期券のようなイメージ)を開発して、それを持ってもらうことにしました。携帯電話の代わりにこのタグから位置情報を保護者の方に通知できるようになるという仕組みです。
しかもこのタグ、充電が必要ないので、ずっとランドセルに入れっぱなしで良いという優れもの。その反面、タグからの信号を中間で受け取って保護者へ送る“検知器”が必要になります。普通の自治体は“検知器”を街じゅうに置くことを考えてしまいますが、当然維持管理費がかさみ、実証実験が終わったら財政上の理由で中止、なんてことになってしまう可能性があります。
それでは全く意味がないということで神戸市は、近所の方や自治会、タクシードライバーコンビニの社員の方など「見守り協力者」の方に協力を要請しています。しかもその協力内容はただ一つ、「見守りボランティアアプリをインストールしてもらう」ことです。
このアプリはタグからの電波を自動で検知するようになっていて、タグを持った子どもがアプリを入れた携帯電話を持っている人に近づくと、アプリ保持者には気づかないうちに“検知器”役になり、親に子どもの現在位置を送信してくれるそうなのです。(すごい)
一つひとつの点が子どもの位置。さすがに海の上にあるのはエラーだそうです(笑)
この実証実験、現在は終了しましたが、代わりに阪急阪神東宝グループの行うあんしんサービス「ミマモルメ」に移ってもらっているそうです。
これまた民間のサービスですが、姫路から和歌山あたりまでカバーエリアが拡大し、仮に神戸市で誘拐されて他の場所に連れていかれたとしても、位置を特定できるようになったのだとか。(確かに誘拐犯が一市町村の中で犯行を完結させるとは限りませんし、市町村単位で見守りをするってナンセンスですよね)
👉思ったこと
実証実験を通して、「子どもたちは案外通学路以外のところを通っている」ということが分かったそうです(夏はデパートで涼んでから帰るなど)。確かに自分自身も振り返ってみれば、小学校の頃もよく神社とか公園に寄り道してたなー、と思います(笑)
目黒区でも、登下校の見守りのために立っていただいているボランティアさんで、果たしてどれだけ見守りの目を確保できているのか(人間の目は2つしかありませんからちょっと離れたら死角です)、問い直す余地があるのかもしれません。
ともあれ、子どもの現在位置などというデータは、行政単独で集めるには膨大な費用がかかっていたことでしょう。それをICTに長けた民間と協働することで、効率よくデータを集めて解決に導く、こうした手法は非常に鮮やかです。
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まだ取り組みを2つしか書けていませんが、ん~文字数が限界ですね。
続きは次回。神戸市の更なる挑戦と、我々目黒区のICTの活用状況について書いていきます。
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