今回は、学校図書館、いわゆる“図書室”と呼ばれる部屋についてのお話です。ブログをお読みいただいている多くの方にとって、「もう関わることのない場所」かもしれませんが、目黒区の子どもたちが日々関わるこの施設に、今、ある問題が発生しています。
それは、学校図書館で働く方の「やりがい搾取」。
先週の議会で、この学校図書館について指摘したところ、少し光明が見えた感がありましたので、ご紹介します。
そもそも、“学校図書館(図書室)”と聞いたとき、どんなイメージを持ちますか?
……どんよりした空気、ヒト気がない、存在感が薄い……
私が小学校に通っていた15年くらい前を思い返すと、だいたいそんなイメージだったように思います。
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けれどもこの学校図書館、実は国際的に見ると、学校教育の中で非常に重要な位置づけを与えられています。(アメリカでは「学校の心臓」とも言われるようです。)
学校図書館の役割は大きく次の3点に集約できます。
「読書センター」
…読書活動の拠点となること。要するに、読書をする場所としての機能ですね。日本の学校図書館にはこれ一辺倒な気がします。
「学習センター」
…授業に役立つ資料を備え学習支援を行うこと。先生に授業で使える資料をアドバイスすることも含みます。
「情報センター」
…情報を集めたり取捨選択する能力を育む“情報リテラシー”教育を行うこと。
このように学校図書館は幅広い機能を持っていて、活用法次第ではまさに学校教育の「中核」になる可能性も秘めた施設であるとされています。ただし、学校図書館がその機能を十分に発揮するためには、読者と蔵書を結びつける学校司書の配置が不可欠です。(人のいない“図書館”は、もはやただの“書庫”ですし……)
この点に関して、例えば『ユネスコ学校図書館宣言』の中では、こう書かれています。👇
「図書館職員と教師が協力する場合に、児童生徒の識字、読書、学習、問題解決、情報およびコミュニケーション技術の各技能レベルが向上することが実証されている」
「学校図書館には、訓練された職員のための経費が十分かつ継続的に調達されなければならない。」
こうした国際的な流れを受けて、日本でも平成27年に改正された学校図書館法において、学校司書の設置が努力義務として規定されました。👇
ところが、目黒区立の小・中学校ではいまだに学校司書の配置は実現できていません。現在は、有償ボランティアから構成される「学校図書館支援員」(以下、支援員という)の方がその代役を務めているところです。
ただし、仕事内容は学校司書とほぼ同じで……👇
そのすべてを行うにはかなりの時間を要するものとなっています。しかも、好きなだけ働けるかというとそうではなくて、目黒区の支援員制度、報酬(時給1500円)が支給される時間数の上限が決められています。それがまた、厳しすぎるんです……👇
小学校だと授業日”1日のうちわずか41分”、中学校で”1時間23分ずつ”だけでも毎日勤務していったら到達してしまう程度の時間数です。この1日41分という中で、先にご説明した仕事を全うしようとしても、非常に難しいであろうということは、ご推察いただけるかと思います。
さらに小学校138時間、中学校278時間という差にも問題がありまして……
目黒区では中学校の方が多くの時間が割り振られていますが、実際には小学校の方が業務量が多くなる傾向があります。なぜかといえば、6学年ある小学校の方が中学校よりもおおむね学級数が多い、つまり、より多くのクラスへ向けて授業で使う資料を用意する必要があること、それに加えて小学校には、独自の「図書の時間」が設定されていて、ここへの準備が別で必要になるからです。
この時間数の上限を23区で比較したのが下の表です。👇
網掛け部分が目黒区よりも学校司書の勤務時間数が少ない区を示していますが、中学校では江戸川区、江東区に次いで下から3番目、小学校は、23区で最下位、それもかなり突出して少ない時間数であるということが見て取れます。
そこで、実際に区内の小学校で勤務されているAさんのケースを見てみますと、4月に働き始めて半年にあたる9月時点ですでに、上限時間に達してしまっています。👇
ただこのAさん、10月以降も、表にはありませんが、「図書館の運営に穴をあけるわけにはいかない」というお気持ちひとつで、無給で働いていらっしゃる、そのような状況です。
ほかにも、下の吹き出しのようなご意見など、私は今回、議場で一般質問をするにあたって、8名の支援員の方からお話を伺いましたが、8人全員が、「この時間数では十分な務めが果たせない」とおっしゃっていました。👇
改めて強調したいのは、学校図書館は本来、さまざまな機能を持っていて「学校教育の中核」となりうる重要な施設だということ。ちょうど来年度から順次施行される新学習指導要領でも「生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に生かす」ことが求められるようになり、学校図書館の重要性は年々増しています。
しかし、目黒区ではその流れに乗れず支援員の方の“やりがい搾取”ともいえる事態が続いています。学校図書館の機能強化に向けて、まずは支援員の処遇改善が必要であるという考えから、上限時間数、有償ボランティアという弱い立場の改善も含めて、制度の見直しを求めました。
もちろん役所も、今回の指摘を受けてすぐ反映することはできませんが(4月からの予算はすでに固まってしまっているので、令和3年4月からの予算に向けて主張しなくてはいけません。)、
教育長からの答弁の中では、
「派遣時間数上限や処遇改善等も含め、学校図書館支援員の活動内容や派遣形態について、今後も検討してまいりたい」
というワードを頂くことができました。なんともお役所言葉全開ですが、この「検討」というのは割と踏み込んだ表現で、
前向きに検討します>検討します>調査研究します>実施は困難です
という前向き度で言うと上から2番目くらいの強さでしょうか。ひとまず課題であると認識していただけたようなので、改善への一歩目は踏み出せた感があります。
(2021年3月追記)2021年度から、小学校への派遣時数を100時間上乗せすることが決定しました!!しかしこれでもまだ、23区中21番目の低待遇(小学校)。引き続き、改善を求めていきます!
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議会での質問の中では、他にも、支援員への研修の話、区立図書館との連携の話など、他の問題点も指摘させていただきました。(下のページから映像が見られるはずですが、しばらく経たないと更新されないようです…)
授業にもっと学校図書館を活かし、先生の負担を軽減させるためにも、この問題はこれからもウォッチしていこうと思います。
そして、実は同日の質問で、(これまでのブログで散々更新すると言い、ここまで引っ張ってしまっている)「図書館どうする問題」も指摘。次回(?)はやっとこさ、こちらも完結できればと思っています。
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