活動報告(ブログ)

保健医療(コロナ)

防げる病気を、防がないでどうするっ!(子宮頸がん予防ワクチン)

 

こんにちは。27歳の目黒区議、かいでん和弘です。

 

先週いよいよ、コロナワクチンの医療従事者向け先行接種が始まりましたね。(目黒区内の東京医療センターが一例目!)

 

YAHOO! JAPANニュース『コロナワクチン、国内で接種開始 東京の病院で1例目、医師ら先行』

 

 

「病気の検査」は病気に(すでに)なっている状態を“発見”するもの、

「病気の治療」は病気になってから治すために行うもの、

それに対して、

「ワクチンの接種」は病気になることを事前に予防するために行うもの

であり、私も今回のコロナワクチンを多くの方が接種されることを心から望んでいます。

 

 

さて、本日のブログでは、この「ワクチン」について取り上げます。ただし、新型コロナのワクチンではありません。今回は、若い女性の命を奪う「子宮頸がん予防ワクチン」に関してです。

 

この「子宮頸がん予防ワクチン」について、昨年12月の議会で、いろいろな提案を目黒区へ投げかけましたので、その模様をわかりやすくお伝えしていきます。(非常に議論が紛糾しているテーマですから、私も少々緊張しながら質問にあたりました。)

 

 

子宮頸がんって何?

 

子宮頸(けい)がんは、女性の子宮の入り口付近(子宮頚部)にできるがんのことです。

 

 

公益社団法人日本産科婦人科学会HP「子宮頸がん」より引用

 

 

日本国内では、年間で約1万1,000人が罹患し、約3,000人の方が命を落としていている、非常に怖い病気です(女性の75人に1人が生涯に一度は罹患するといわれています)。

 

そして、海外ではこのがんに「Mother Killer(母親殺し)」という異名があることからもわかる通り、女性の中でも若い方が多く罹患するがんとして知られていて、特に20代の女性にとっては、他の乳がんや卵巣がんなどを抑えて、がん発症部位として第1位になっているほどです。

 

 

国立がん研究センターがん情報サービス「グラフデータベース(子宮頸がん)」より引用、赤字はかいでん追記

 

 

予防できるがん

 

このように、大変恐ろしい病気なのですが、このがんは一つ大きな特徴を持っています。それは、「大変珍しい予防できるがんである」という性質です。

 

どういうことかというと、子宮頸がんに罹患する原因の95%以上が、ヒトパピローマウイルス(以下HPVと略)というウイルスへ感染することによってもたらされるものなのですが、実は、このウイルスへの感染を予防するワクチンが存在するのです。

 

このHPVは、性交渉の経験のある女性の50~80%が生涯に一度は感染するといわれている、本当に何も珍しくないウイルスでして、ほとんどの場合、感染しても自然に体外に排出されていくのですが、もし排出されず数年から数十年持続的に感染した場合、子宮頸がんになるリスクが高まります。

 

そこへ前もってワクチンを接種しておくことでHPVへの感染やがんになる手前の異常を90%以上予防できるといわれているのです。

 

世界では、2019年2月現在、92か国で国の予防接種プログラムとしてPHVワクチンが導入されています。

 

公益社団法人日本産科婦人科学会HP「HPVワクチンの積極的勧奨再開に関する要望書」資料より引用

 

 

じゃあ多くの方が接種している?

 

それが、日本ではそうはなっていないんですよね……。

 

ここからの経緯は、読者の皆様も当時のニュースなどで盛んに報じられましたのでよくご存じの方も多いと思いますが、

2009年 公費助成の接種開始(中1~高1)

2013年4月 小6~高1の女性を対象に無料で接種できるよう定期接種化

 

と進んでいったものの、わずか一か月半後の6月、HPVワクチンの接種により重篤な副反応(薬でいう“副作用”)が発生している疑いが新聞・テレビなどのメディアで盛んに報じられ(当時の報道では両手足の脱力や意識の低下、慢性の痛みなど)厚生労働省は態度を急に翻したのです。

 

すなわち6月14日に新たに下の「勧告」を出して、ワクチン接種の積極的勧奨を中止することとしたのです。これによって、対象者に対して個別にワクチン接種のお知らせを送って案内することを差し控えることとなりました。

 

ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について(勧告)

 

 

つまりどういう事態になったかというと、引き続き小6~高1の女性であれば無料で接種することができる(今現在もそうです!)のですが、対象年齢の方たちにそのお知らせをしていないので、だれもその事実を知らないまま、接種しないままになってしまうということです。(ちなみに、期間を過ぎても接種できますが、その場合全額自費となるため、5万円くらい払わないといけません。)

 

その結果、昨年度の目黒区のHPVワクチン接種率を見てみると、対象となる女性のうちの1.7%しか接種していないという状態に落ち込んでいます(!!!)

 

(表)目黒区健康福祉部・子育て支援部 事業概要より抜粋

 

 

この低接種率は日本全体で見ても同じで、接種が行われていた世代と、積極的勧奨が中止されてしまった世代とでは接種率に天と地ほどの開きが発生しています(現在の日本全体の接種率は1%に満たないと言われます)。

 

公益社団法人日本産科婦人科学会HP「HPVワクチンの積極的勧奨再開に関する要望書」資料より引用

 

 

また昨年10月、この低接種率に関連して、悲劇的な発表がありました。

 

大阪大学などのグループがまとめた研究によると、接種率が激減したまま高1までの対象時期を過ぎた00年度~03年度生まれの女性では、ワクチン接種を続けた場合と比べて、将来に子宮頸がんにかかる人が約17,000人、亡くなる人が約4,000人増える計算になったというのです。

 

大阪大学の研究専用ポータルサイトResOU「HPV ワクチン接種率の激減によって増加する子宮頸がん罹患・死亡者の推計人数」より引用

 

 

副反応は、実際どうなの?

 

私は医学的な知見を一切有していない素人ですので、副反応の存在不存在について確たることを言える立場にありません。が、そんな私でも、客観的な調査、研究を参照し、自分なりに考えることはできます。

 

例えばこちら(↓)、厚生労働省の下に設置された審議会の資料ですが、

第31回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会資料『諸外国の公的機関及び国際機関が公表しているHPVワクチンに関する報告書』

 

その中には、各国の調査で、「2013年当時に日本で騒がれたような重篤な副反応はHPVワクチンの接種によるものであるというエビデンス(証拠)は見られなかった」という報告が上がっています。

 

 

 

また、非常に先進的だったのが、名古屋市が行った調査(通称・名古屋スタディ)でした。

これは、当時HPVワクチンによる重篤な副反応の疑いが報じられていたことを受け、接種した人と接種していない人に「副反応と言われる」症状の発生率がどれだけ違うのか、という事を、国内で初めて大規模(3万人)に実施したものです。

 

名古屋市HP「子宮頸がん予防接種調査の結果を報告します」

 

上の調査結果には各項目について事細かに書いてあるのですが、この調査を監修していた名古屋市立大学の鈴木貞夫教授へのインタビューをもとにしたこちら(↓)の記事をご覧いただければ、調査結果がどのようなものだったかお分かりになると思います(ぜひご一読いただきたい)

時事メディカルHP「子宮頸がんと副反応、埋もれた調査「名古屋スタディ」監修教授に聞く」

 

 

画像の通り、HPVワクチンと「報じられていた副反応」との間に、因果関係を積極的に支持するものは一つもないということが明らかになったのです。

 

 

念のためお断りしますね。私は、このHPVワクチンが「副反応がないワクチンだ」なんていうつもりは毛頭ありませんし、そもそも副反応のないワクチンなんて存在しません。今回のコロナワクチンだって、あるいはインフルエンザワクチンだって同じです。

 

けれども、数百万回に1回起きるか起きないかという副反応を心配して、年間3,000人の若い命が失われているのが今の日本の現状です。この状況を見て、私は一人の政治家として思います。このワクチンは、打つべきだ、と。

 

 

変わりつつある潮目

 

さて、以上がだいたいここまでの流れですが、実は去年10月、7年ぶりに厚生労働省の勧告(積極的勧奨を差し控えるとした例のヤツです)が一部改正されました。

 

「ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について(勧告)」

 

その内容は次の通り。

 

 

まず、残念ながら今回も、「接種の積極的な勧奨とならないように留意する」という方針は変わりませんでした。しかし、(おすすめはしないように気を使いながらも)対象者へはワクチンの存在を知らせる個別通知は基本送ってください、という事になりました。大きな一歩!

 

また、医療機関では、ワクチンを接種するために受診してきた方に対して「積極的にはおすすめをしていないんです」とわざわざ伝えなくてもよいとされたほか、以前の勧告の中にあった「副反応症例」という文言は、ワクチン接種と副反応との間の因果関係が証明されていないことから、「副反応疑い報告」という、より客観的な言葉に改められています。

 

 

そして、厚生労働省が発行する、対象年齢のお子さんに向けたリーフレットも新しくなりました。

 

デザインも変わっているのですが、内容面での変更点についていえば、

 

 

以前のものは、表紙に「HPVワクチンは、積極的におすすめすることを一時的にやめています」と大書されていたものが、新しいリーフレットでは取り除かれ、代わりに「接種をおすすめするお知らせをお送りするのではなく、希望される方が接種を受けられるよう、みなさまに情報をお届けしています。」という中立的な表現に改められました。

 

 

目黒区の対応も変えていこう!

 

さて、ここからが(ようやく)目黒区のお話です。実は、目黒区でも昨年から(つまり新しい勧告が10月に出される前から)、「ワクチンを無料で打てますよ」という個別通知を対象者に送るという取り組みを再開していました。区内の高校一年生を対象に、7月に次のようなお知らせを発送しています。

 

 

私としては、本心ではHPVワクチンの積極的勧奨再開を訴えたいのですが、あいにくそれは国会議員の管轄。私は区議会議員として、目黒区の送付しているこのお知らせに関して、3点の提案をしました。

 

 

①「案内文を送る対象者を現在の高校1年生だけでなく、定期接種が始まる小学6年生ないし標準的接種年齢とされる中学1年生にまで拡大すべきでないか」

 

無料で接種できるのは、小6~高1までですから、送付している高校1年生は無料接種の最終年ギリギリのタイミングです。それなら、小6か中1にも送って、「今からの数年間は無料ですよ」というお知らせにすべきではないか、という提案です。

 

 

②「案内文の中にある“積極的に勧奨することはしていませんが”という部分を削除し、代わりに表現を厚生労働省のリーフレットのような中立的な形に改めるべきではないか」

 

役所から“積極的にお勧めしていない”と言われてしまうと、それだけでもう「安全じゃないんだ」という先入観が生まれてしまうじゃないですか。そうじゃなくて、きちんと中立的にワクチンの存在をお知らせして、先入観なく、打つか打たないか冷静に判断していただくべきではないか、という提案です。

 

 

③「このお知らせの発送時期を現在の7月から前倒しして、年度当初に送るべきではないか」

 

このHPVワクチン、全部で3回打たないと効果を発揮しないんです(コロナワクチンも2回セットで打って効果を発揮しますよね)。そして、初回の接種から3回目の接種完了までだいたい4~6か月かかるといわれています(お知らせの真ん中にある図)。

そうすると、高校1年生(無料接種の最終年)の7月に区からお知らせを出したら、すぐに意思決定して打たないと間に合わないんです。色々な情報が飛び交っているワクチンです。しっかり安全性を調べていただいてから打ってもらえるよう、早めのお知らせが必要では?という提案です。

 

 

目黒区の回答は?

 

(区長答弁)

御質問にありますよう、周知対象者の拡大、文面中「積極的に勧奨することはしていませんが」の文言の削除及び発送時期の早期化につきましては、国の勧告の趣旨を踏まえつつ、周知対象及びその保護者が、HPVワクチンの有効性、安全性に関する情報について正しく理解できるよう検討してまいります。

 

どうです?

やはり、区としても踏み込み難い(=それだけ反対の声も強い)テーマでしょうから、予想していた通りすごく漠然とした回答です。しかし、文末の”検討”というのはお役所言葉でいう”調査研究”よりは前向きなワード。

 

ぜひ目黒区がしっかりと周知して、ぜひ多くの方が自分事として真剣に向き合ってもらえるよう、願いたいです。

 

 

この回答に対して、議場では再度質問したのですが、さすがにこのブログには文字数が多すぎてタオルが投げ込まれましたので、さわりだけ。

目黒区ではHPVワクチンの接種率も1.7%、子宮頸がん検診の受診率も24%と、子宮頸がんを予防するために必要な「一次予防」も「二次予防」もできていないじゃないか、どうするのか? 

とか、

学校でのがん教育が大事なんじゃないか? 

といった内容が気になる方は、

 

ぜひ議事録検索検索システムから、「子宮頸がん」と検索してみてください。トップに出てくる11月24日の内容が私の質問です。

 

「若者の声を区政に」をスローガンに活動している議員として、この問題は今後も向き合っていきたいと思います。

 

 

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