活動報告(ブログ)

子育て支援/福祉

目黒区の少子化対策、進んだ?

こんにちは。28歳の目黒区議、かいでん和弘です。今回のテーマは「目黒区の少子化対策」についてです。

数年間の少子化対策

2015年度、目黒区は『目黒区人口ビジョン』という計画を作りました。これは、「将来は区の人口が●人になる!」とか「高齢化率が●%に!」とか主に人口に関する推計、戦略を記載したものなのですが、この中に、出生率の目標値が掲げられています。マーカー部をご覧ください。

『目黒区人口ビジョン』 より

“2040年に、希望出生率(1.50)を実現する”とのことで、計画を策定した当時の出生率が1.05だったことを踏まえれば、かなり高い目標を掲げているようにも思えます(国の2020年時点出生率は1.34)。

では果たしてどうやってこの数字を達成するのか?目黒区は同計画の中で、

  • 高まる保育需要需要に応える(=保育所増設)
  • 男性の育児参加を積極的に促す意識啓発
  • 事業者によるワーク・ライフ・バランス実現への取組の支援
  • 就労支援の充実

等を行っていくとしています。実際、それから7年が経過していますが、この計画に基づいて令和2年度には待機児童ゼロを達成するなど、区の取り組みは着実に進展してきました(本当に目黒区は頑張ってきたと思います。どのくらいかというと、区の支出全体に占める児童福祉費の割合が23区で一番高くなるくらいです)。

(財政のことについては、過去ブログ「目黒区の財政を動画で紹介!」をご覧ください)

これはさぞかし出生率も上がったに違いないと期待も高まりますが……結果はこちら!

んー、2014年が1.05だったのに対して、2019年は1.05、2020年は1.02……ほぼ横ばいといいますか、むしろ下がっています……

2020年は「コロナ禍での出産控え」もありましたのである程度差し引いて考える必要がありますが、それにしても区の努力が全く報われていない……これはどうしたことでしょうか?

なぜ出生率が上がらない?

先の『目黒区人口ビジョン』にも

意識調査によれば多くの人が結婚や出産を望み、そのうち子どもを望む人の多くが 2 人の子どもを希望しています。また、既婚者も同様に多くの人が 2 人の子どもを希望しています。合計特殊出生率の低さを考えれば、希望と現実の間にギャップがあることが推察されます。

と書かれていましたね。区としては、「多くの人が2人以上の子どもを望んでいるのに出生率は1.05。これは子育て支援をもっと充実しなくては!」と考え、先のような対策を行ったのだろうと思います。

そこで次のグラフをご覧ください。これは、本ブログでこれまで“出生率”と呼んでいた「合計特殊出生率」(オレンジ)と 「完結出生児数」(青)を比較したものです(いずれも日本全体の数字)。

合計特殊出生率は、一人の女性がその一生の間に生む子どもの数で、結婚している人もいない人も含めた数字になります。一方、青色の「完結出生児数」とは、結婚している夫婦間の最終的な子どもの数を表す数字です。

国立社会保障・人口問題研究所『第15回出生動向基本調査』結果より作成.
国立社会保障・人口問題研究所HP「第Ⅱ部 夫婦調査の結果概要:2.夫婦の出生力」

ぱっと見、1972年には青もオレンジも同じくらいでしたが、その後は決してシンクロしているわけではありませんよね。オレンジはすぐに低下し始めたのに対して、青は2002年まではほぼ横ばい、少し下がってきた2015年でもオレンジとの差は0.5ほど開いてます。

そして特に注目していただきたいのは、この完結出生児数は2015年でも1.94だということ。これはつまり、結婚している夫婦間の子どもの数は、昔も今も概ね2人前後で大きくは変わっておらず、夫婦間の子ども数が少なくなったことが出生率低下の最大の要因ではないということが言えるのです。

私も議会質問の準備でさまざまな文献に目を通しましたが、一様に「出生率低下の要因のほとんど(約9割とも)は、未婚化、結婚しない人の割合が増加したこと(+初婚年齢の上昇)に起因する」ということが書いてあり、「出生率を増やすために子育て支援頑張らなくちゃ」という自分の中の思い込みが覆されました(赤川学著『これが答えだ!少子化問題』(筑摩書房,2017年)、山田昌弘著『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』(光文社,2020年)などが参考になります)。

内閣府『平成30年版 少子化社会対策白書』より

上のグラフはわが国の未婚率の推移です。50歳時の未婚率は2015年に男性23%、女性14%と、男女いずれも5年前から3ポイント以上増えており、これが2040年には男性30%、女性19%にまでさらに上昇するとみられています。これこそが少子化の一番の原因なのです。

以上まとめると、これまで区が出生率向上のために行ってきた「保育所の増設」や「男性の育児参加を促す意識啓発」等のお子さんが生まれた後の支援(出生後支援)は、当然“子育て支援”ですとか“男女共同参画”などの様々な意義があるものなので事業自体を否定するつもりは一切ありませんが、こと出生率改善策という文脈においては効果のあまり期待できない政策であったということです。

結婚して子どものいないご夫婦を後押しする、あるいはお子さんを1人育てているご夫婦に「もう1人」と応援するための子育て支援施策は(出生率改善という観点だけからすれば)ほぼ無意味 ※ 、むしろエビデンスに基づいて考えるならば、未婚の若者にフォーカスした施策、いわば婚姻前支援・出生前支援にこそ重点を置く必要があるのです。

※誤解しないでください。子育て支援は大事ですし、もっともっともっと充実しないといけないと考えています!!

出生率の目標は必要?

「婚姻前支援・出生前支援としてどんな取り組みが必要か」という私の考えは次回書きますが、本ブログでは出生率を目標値に掲げる意味について考えてみます。

2019年選挙時ビラ抜粋

実は私も、前回選挙に出る前に使っていたビラの中では「目黒区の問題点」として低出生率をあげていたんです。もちろん今でも、日本全体で見たときには低出生率とその結果としての少子高齢化こそ一番の課題だと思っていますが、それがいち自治体である目黒区でも同じように問題か、ということについては若干考えが変わってきました。

目黒区『コミュニティ施策の今後の進め方』より

というのも、目黒区は転出入がひじょーに激しい区なんです。上の画像、マーカー部分にあるように“総人口の10%ほどの人が毎年入れ替わっている状況”というとんでもないことになっています(毎年10%ということは…5年間だと人口の半分が入れ替わる?……まあそんなわけはなく、特定の方々(特に若い世代)が頻繁に転出入を繰り返しているということだとは思います)。そのような土地柄ですから、出生率向上策をせっかく行っても他区へ転出してしまい、費用対効果が十分に上がらない可能性も高いんですね(それでも良いことなんだから、やるべきというご指摘はあるでしょう)。

そうした特殊事情を考えれば、本来出生率というのは、いち基礎自治体が目標値として定めて一喜一憂するのはどうなのか?と考えるに至りました。当然子育て支援や若者支援はマストで行う必要がありますが、(住民の移動が多いために)出生率ではそれらの成果は測れないと考えるべきで、であるならば目標値に設定するのは如何なものかと。以上の見解を問うたところ、目黒区としては、

現時点で、出生率を含めて基本的な方向性を変えていくという考えはございません。

という返答でした。ふむ、ならばよいでしょう。目標値にしているからにはしっかり責任をもって達成していただきたい。そしてそのために、出生率低迷の最大要因にアプローチする婚姻前・出生前の支援策をやってくれるんですね?

次回に続きます。

後編はこちら

《区政の最新情報はこちらから!》

コメント

  • コメント (1)

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    • K R
    • 2022年 4月 16日

    『結婚している夫婦間の子どもの数は、昔も今も概ね2人前後で大きくは変わっておらず、夫婦間の子ども数が少なくなったことが出生率低下の最大の要因ではない』ことを、初めて知りました。未婚率の上昇が要因だったと。となると、出生率を上げるにはフランスのように未婚の母を世間が広く受け入れる風土が必要、ということにもなりそうですね。勉強になりました。

    また、出生率の維持の目的が、仮に将来人口の減少による財源の低下だとするなら、おっしゃる通り、出生率そのものをKPI(定量目標)にするのは、少しずれがあるかもしれないですね。

    次回も楽しみにしてます。

希望しない


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