活動報告(ブログ)

若い世代と政治

「私たちの声を聞いて!」 やろうよ若者議会

こんにちは。28歳の目黒区議、かいでん和弘です。今回は先日の代表質問で提案した「若者議会」について取り上げます。

若者⇔区政の遠い現状

私が「若者議会」に言及した理由、それは、若者と区政との距離があまりに遠いからです。目黒区の現状を2つのデータからご紹介します。

投票率が低い

目黒区選挙管理委員会発行『選挙の記録』より筆者作成

直近行われた選挙ごとの目黒区における年代別投票率です。 全体的に国政(衆・参)は高く、区政(区議・区長)は低いなど多少のバラツキはありますが、どの選挙でも20代~30代が明らかに他の年代よりも低くなっています。

意識調査への回答率が低い

目黒区『第46回 世論調査』P8図より筆者改変

目黒区が3年に一度実施している「世論調査」では、3,000人という限られたサンプル数で28万区民の実際の世論をできるだけ正確に切り取れるように、送り先を実際の区民の構成割合(年齢・男女比・地域人口)通りに割り振っています(例えば30代以下の区民は区内成年人口のうち35.8%を占めるので、前回調査では3,000通のうち36.2%にあたる1,087通を30代以下に送付しています。)。

しかしせっかく配られても、若い世代ほど「めんどくさ~」と、調査に回答しないため(回答したのは371人)、10代~30代の意見が全体の25%分にしかなりませんでした。それでも区としては、この調査結果を「民意」として政策を作らざるを得ません。結果的に若者の意見が過小評価されてしまうわけです。

私はこれまで、このような「区政と若者の距離の遠さ」に対して度々、「政治に目を背けることのない主権者を育てる教育(主権者教育)の充実を!」と訴えてきましたが、“未来の主権者を育成するのと同時に、“現在の”若者の意見も吸い上げる必要があります。そこでたどり着いたのが「若者議会」の取り組みでした。

「若者議会」 とは

「若者議会」とは、一般の若い市民に短期間のあいだ“お試し議員”になってもらい、議場で彼ら彼女らの考える政策を提案してもらう取り組みです。若者にとってはなかなかできない社会参画の経験をすることができますし、市にとっても若者目線での新たな気づきを得られるなど、双方にとってメリットのある企画です。

なかでもトップランナーとして知られるのが、愛知県の新城(しんしろ)市。長篠の合戦で有名なところですね。

新城市では「中学生議会」「若者議会」という2つの取り組みを行っています。このうち「若者議会」は、16歳から29歳までの参加者20名がいくつかのグループに分かれて半年間(長っ!)のあいだ政策を練り上げて、市に提案(プレゼン)しています。

普通、学生さんなどに政策を考えてもらうと、発想が自由すぎて「駅ビルをつくってカフェを誘致してほしい」みたいな、その自治体ではおよそ実現できない提案が出がちなんですよね。それだと、行政にとって得るものがないし、若者にとっても「結局政治は意見を聞いてくれないのね」と幻滅するだけ。

でも新城市の何が優れているかって、各グループに“メンター”と呼ばれる職員がぴったりくっついて、若者へ適宜アドバイスや庁内調整等のサポートをしているんです。ですから、若者のアイデアを新城市で“実現可能な”政策をに落とし込めると。しかもその事業にいくらかかるかという予算の見積まで行ってしまうというから、なおすごい。こんなのは市職員がサポートしていないとまず無理です。

さらに市としても若者から提案される内容にあらかじめ1,000万円の予算枠を確保して、「1,000万円以内であれば、提案されたものを実現しますよ」と実行性を担保しているんです。それにより、図書館のリノベーションやバブルサッカー教室など、実際に若者議会での提案から街の施策が動いてきたといいます。

HPには若者議会を紹介するマンガも掲載されています。いいですね~

新城市HP「新城市若者議会について」より

新城市のようにガッツリとはいかないかもしれませんが、23区でも実施例があります。新宿区のしんじゅく若者会議、墨田区の中学生区議会、北区の中学生・高校生モニター会議、練馬区の子ども議会など8区で、何とか若い世代の意見を吸い上げようと模索しているんですね。

昔は目黒区でもやっていた

目黒区でもこういう取り組みができないものかと調べていた一昨年3月、議会図書室(関連記事:「よみがえれ!「議会図書室」」)内で衝撃的な報告書を発見しました。

「子ども議会」の記録ダッテ!!??

実は目黒区でも、以前は「子ども議会」を実施していたのです。各学校の児童生徒の代表者と、区長、議長、副議長、区幹部職員が議場(旧区役所内の議場)に集まって質疑応答するというもので、平成6年から平成9年の間に3回、実施されていました。

モノクロ写真は全て『「子ども議会」の記録』より。以下同じ。

「なんだ、目黒区も昔はやる気あったんじゃん!!」

要改善ポイント

実際のところ、当時の企画が「完璧」だったわけではありません。この事業をやるうえで欠かせない部分での残念ポイントもありました。

形式的過ぎる進行

当時の議事録を見ると、子どもからの質問が始まるまでにいくつもの儀式を行っているんですね。午後2時に開会してから、

正副議長と区職員の自己紹介
区長あいさつ(長い)
議長あいさつ(長い)
開会宣言
会議録署名議員の指名
会期の決定(議長が「子ども議会の会期は●月●日の1日間としたいと思います。これにご異議ございませんか?」と聞きます。)
区長から目黒区の紹介(長い)

をこなして、それらが終わるとようやく子どもたちの出番。結果、午後5時までの3時間フルコースです。

極力、ホンモノの議会のやり方を実感してもらおうという趣旨だと思いますが、こんな格式ばった進行、大人の私でも退屈しちゃいます。せっかく政治に親しんでもらおうと思って子どもたちを呼んでいるのにこれでは「政治ってつまらないな」と幻滅されてしまいますよね。

参加者なのに一言も話せない

平成6年の子ども議会では、参加した小学生43人中、議場で発言したのはわずか5人だけ。確かにホンモノの区議会では一言も話さない(プログラム上そう決まっている)日も多いですが、せっかく希望して子ども議会に参加してもらっているのですから、もったいないですよね。

質問の質

子どもたちからの質問には大変優れたものもありましたが、一方で「区内の外国人はどこの国の人が多いですか?」とか「姉妹都市はどこですか?」など、調べたら分かる区の現状をただ単に聞くような質問が多く、区政を変える前向きな提案というのはなかなかありませんでした。

もちろん小中学生ですから仕方ない面はありますが、彼ら彼女らだってちゃんと区政について学習し政策を考える時間をしっかりとれさえすれば、行政を「あっ」と言わせる提案をできるポテンシャルはあるはずです(新城市はそのために半年間のプログラムとしています)。

実現する気があるか分からないこと

当時の子ども議会は予算が紐づいていませんでした(新城市とは対照的)。ですから、区には子どもたちからの提案を実行する責任も保証もありません。実際に提案事項がどうなったか、記録には載っていないのでわかりませんが、せっかく提案しても実施しないただのパフォーマンスなら、必要ありません。

子どもたちの中にはのちの都議会議員・西崎つばささんもいらっしゃったようで(笑)

提案

当時の「子ども議会」には先のような課題があるので、私も「そのままのスキームで事業復活を」とは言いません。でもいくらでも改善できます。

・実際の議会に寄せる必要ナシ。儀式的な要素は削って提案に時間を使う。

・参加人数や発言者数を増やすために、チーム制の政策プレゼン方式に。

新城市がこのやり方ですね

・より現実的な提案をしてもらうために対象年齢を拡大。

新城市では30歳未満ですが、他にも被選挙権が与えられるまでの「25歳未満」というのもアリだと思います。

・少なくてもいいから予算を付ける。

山形県遊佐町ではわずか45万円ですが独自の政策予算を付けています。

大事なのは、自分の提案が“認められた”という経験をしてもらうこと。区が、彼ら彼女らの提案を実現する努力を見せれば、子どもたちに「自分たちの力でもまちを変えることができるんだ」という成功体験を根付かせることができ、これが大人になってからの社会参画の意識につながります。これを予算措置によって担保しなければなりません。

若者の声を汲み上げる必要性

こういう提案をすると「若者だけ尊重されて利益を受けようということか?」というご意見もあろうかと思います。これについて穂積亮次・前新城市長は、市長と地域との意見交換会でこう説明されていたそうです。

特に重視したのは、若者政策といっても、「若者のためだけの政策ではなく、市民全体のための政策を若者の視点で考えるということである」ことを地域の住民に理解してもらおうと考えたことである。

松下啓一・穂積亮次編『自治体若者政策・愛知県新城市の挑戦―どのように若者を集め、その力を引き出したのか―』(2017年・萌書房)55ページより

目黒区でも若者の声が届きづらい中で、区の方針決定がなされています。「投票でも世論調査でもチャンスは平等に与えている。若者が政治に無関心なのだから仕方ない。」と終わらせることもできますが、若者の声が欠落した視野の狭い区政運営は、区にとっても、区民全員にとっても望ましくありません。待っていても若者の声が集まらないのなら、区の方から次なる手を打って、歩み寄っていくことが必要です。そうした思いから、「子ども議会の実施」を訴えたのでした。

区の見解は、

教育長

「子ども議会は限られた児童・生徒が参加するものであり、すべての児童・生徒が主権者教育に主体的に取り組むことが大切であるとの考えから、今後の研究課題とさせていただきたい。」

区長

「若者の考えを区政に反映することが重要というのはその通り。現在のまちづくり懇談会には若い人が出てこない等、方法は改善の必要あり。

若い議員が増えていくと良いし、区が進めているDX(デジタルトランスフォーメーション)により、SNS等でも区に意見を言えるような区政を目指していく。

とのこと。SNS等で声を集めることは大賛成ですが、若者議会は“区民⇔区民、区民⇔職員で話し合うなかで提案をブラッシュアップできること”がポイントですから、2つは別物。ぜひ両方進めて欲しいと思います。

私も、ずっと気になっている新城市や遊佐町の視察など、より踏み込んだ提案ができるよう修練して参ります。

間区議は以前、新城市の若者議会にメンター側で参画されていました。現地視察は3年前のツイートでも宣言していたんですね……

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