図書館どうする問題
~~~目次~~~
(1)革命的!武雄市図書館!
(2)図書館で調べてみよう
(3)武雄市図書館の”陰”
(4)目黒区立図書館の今
(5)図書館を変えたい ←ココ
こんにちは。29歳の目黒区議会議員、かいでん和弘です。
佐賀県の武雄市図書館へ視察に行ったことをきっかけに書き始めた、シリーズ「図書館どうする問題」。前の記事、図書館どうする問題(4)を書いたのは4年前、2019年でした。(スミマセン)
喉に刺さった小骨のように「更新しなきゃな~」とずっと思っていながら先送りにしていたのですが、さすがに選挙の前には皆さまに「私の図書館に対する考え方」を開陳しなくてはと思い至り、今回、ようやく完結させます。
目黒区立図書館の状況
前回のブログにも上げた表の最新版です。まず目につくのは、令和2年度が貸出者数、貸出点数を大きく減らしていることですが、これはお察しの通り、新型コロナウイルス感染症の影響で休館していた時期があったためです。
一方、登録者数(貸出券の登録者数)にご注目いただくと、これまでもずっと減少傾向にあったのが、さらに令和の3年間で1万1千人も減ってしまっていますね。同時に、これまで一貫して増えていた蔵書数も、直近3年間は減少しています(下のように、書籍購入の予算は毎年ほぼ同額で推移しているので、単に古い本を処分しただけかもしれません)。
図書館の資料整備費の推移
令和2年度 9,474万円
令和3年度 9,332万円
令和4年度 9,313万円
令和5年度 9,672万円
区民アンケートを取ると、毎回「図書資料の充実」の項目が図書館への要望として最上位に来ますが、蔵書数が年々増えていた時期にも利用者数が減っていっていたことを考えると、「単に蔵書の数を増やすだけでは利用者増にはつながらない」と言えると思います。
それに加えて、令和2年度以降、区の人口も減少傾向に……。こうなってしまうと、ちょっとの改善ではこの図書館離れのトレンドは止められないでしょう。
図書館が目指すべき姿は?
このまま人口減少が続き、人々の図書館離れも続いていけば、いずれ区内の図書館数も減らされてしまうかもしれません。ではどうすれば、図書館の存在意義を回復させられるでしょうか?
私は、2つのステップが必要だと思っています。
① 図書館が館の外に出て、イベント開催などで地域と交流する積極性をもつこと。
② 図書館が、単なる読書の場ではなく、人々の課題を解決する場になること。
1つずつ、具体的に書いていきます。まずは①図書館が館の外に出て、イベント開催などで地域と交流する積極性をもつこと、が必要なのはどうしてか。
地域と“つながる”図書館
今の時代、スマートフォンを使えばその場で知りたいことを簡単に調べられますし、画面上での読書も普通のことになりました。わざわざ図書館に行かなくても情報を得られ、読書もできる時代に、図書館がこれまで通り、一部の本好きな常連さんに向けた“待ちの経営”に終始しているようでは、この「図書館離れ」を止めることはできません。
ですから、これからの図書館経営には、普段図書館に接点を持たない人を呼び込むきっかけを、図書館自身が作っていくことが不可欠と考えます。つまり、館の中で来館者を待ち受けるのではなく、自分たち(職員さんも蔵書も)が館の外に出て、イベントなどを通して地域と交流していく積極姿勢が欠かせないのではないでしょうか。
そういった意味合いで、私が目指す政策の一つに“地域とつながる図書館”を掲げています。
図書館にはありとあらゆる分野の本があるのです。それはつまり、地域で行われているどんなイベントや取り組みとも連携することができるということです。ぜひ図書館には、館の外に出て連携するなかで、地域コミュニティを形成し、コミュニティのハブになる役割を担ってほしいという思いから、“地域とつながる図書館”としました。
(これは猪谷千香氏の著書『つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み』に多分に影響を受けています。)
今の図書館がやっていること
目黒区も、(理念の上では)その認識も持っているようです。
今年3月に改定された『目黒区立図書館基本方針』の重点的な取り組みのなかに”区民・利用者の交流を深めるイベント開催など、異なる世代、異なる文化の人々がともに参加できる機会の提供”という文言が盛り込まれていて、図書館の交流への前向き姿勢が一定うかがえます。
でも、じゃあ具体的にどのような取り組みをしているのか、私が2020年2月(つまりコロナ前)に質問したところ、教育委員会からは次のような例が上がりました。
①不用となった児童書を小・中学校や保育園などに提供する再利用選定会
②利用者の声を図書館運営に反映させていくために、図書館利用者懇談会
③障害者週間記念事業「めぐろふれあいフェスティバル」の会場に図書館ブースを設け、布の絵本や大活字本などの展示など、図書館の障害者サービスを紹介。
④各図書館で児童、乳幼児を対象に絵本を読み聞かせる「おはなし会」
⑤2019年5月に中目黒GTプラザホールで、東京音楽大学の協力のもと行った、学生の生演奏に合わせて読み聞かせを行う「音楽とおはなし会」
私の課題意識は、「図書館の中で、既に図書館の常連さんになっている方向けのイベントを幾ら開いたって、図書館にもともと縁のない方はあくまで無関係で、新規利用者が増えるわけではない」ということなので、①、②、④は打開策にはなり得ません、⑤はコラボ企画としては良いのですが、スペシャルイベントに人が集まったとて、普段から図書館利用者が増えるかというと疑問。ですから、③のようなイベント開催を広げていかないといけないんですと主張しました。
教育長からも、
教育委員会としては、図書館の内外でのイベントを効果的に実施しながら、区立図書館が地域の情報拠点として、また人々の交流の場としての役割を一層発展させ、区民に、より親しまれ、利活用される図書館となるよう努めてまいります。
とのお答えを頂いていたのですが、そのすぐ後、コロナ禍に突入したのでした……
どんなイベントが良い?
改めて、私が「目黒区でもやるべき」と考えているイベントを2つ紹介します。
どちらも、“館の外とのつながり”がキーワードです。
① 様々な講座との連携
1つ目は、生涯学習や社会教育など様々な講座との連携ができるのではないかということです。
今、目黒区ではめぐろシティカレッジをはじめとして、趣味や、健康、あるいは相続など、幅広いテーマで講座や講演会を実施しています。ただ現状、講座を受けたらそれで終わり。よく西欧の生涯学習との対比で指摘されることですが、講座を受けて、その後に参加者に自主学習してもらうための図書館、図書資料への動線がつながっていないんです。
そうなると参加者としては、講師の方の話を聞くだけ聞いて、受け身の姿勢のまま終わりになってしまいますし、講座を企画する主催者も、参加者を集めるということに関心が行きがちで、「その後、参加者に何をしてほしいのか」というところまで、なかなか気が回らないのが現状です。
そこで、参加者をその後の自主学習へと結びつける役目を担うのが図書館です。図書館が講演会に出張し、講演テーマに関する本を並べて紹介することで、図書館に縁のなかった講座参加者と接点をつくる、まさに外から新規利用者を呼び込む絶好のチャンスになり得ます。
② ウィキペディアタウン
次にご紹介するのはウィキペディアタウンです。
これは図書館と街歩きイベントが合体したような取組で、複数の自治体で実施されています。方法は次の通り。
① 参加者はまず、区内の名所や文化財のフィールドワークを行います。
普通の街歩きイベントだと、そこで終わりですがウィキペディアタウンはその後、
② 図書館の会議室に戻り、今見てきた場所の情報をウィキペディアにその場で追加していきます。
ここでポイントなのが、ウィキペディアの記事には必ず出典の記載を求められるということ。ネット上の情報だけでは、なかなか信頼度の高い記事を書けませんので、図書館にある地域の資料を持ち寄って、街で見てきた情報に文献から裏どりする作業を体験いただくことで、普段は街歩きで終わってしまっていた方を図書館へいざなうきっかけになるイベントです。
子どもたちも図書館に
さらに、小さいうちから本や図書館に親しんでもらう取り組みとして面白いものを3つご紹介します。これも工夫をすれば、目黒区でもできそうです。
① ブックスタート事業
兵庫県明石市などで行われています。例えば明石市では、4か月健診と3歳児健診時にすべての親子に図書館へ来てもらい、30分間司書から読み聞かせを行います(親子での読み聞かせ方法も伝授)。その後、図書館の方々と相談して選んでもらった絵本を子どもにプレゼントする取り組みです。(もしその時に親子の様子を見て不安を感じたら、マンツーマンでフォローしていくそうです。)
② ぬいぐるみのお泊り会
アメリカ発祥で、各地で行われています。子どもたちのお気に入りのぬいぐるみに、1泊、図書館にお泊りしてもらい、翌日迎えに行くと、夜の図書館で遊ぶぬいぐるみの姿が写真として渡されます。また、それと同時にぬいぐるみが選んでくれた本を借り、ぬいぐるみと一緒に帰るイベントです。
③ 読書通帳
これも各地で行われています。子どもたちが借りた本を、専用の機械を通して記帳できるサービス。私は荒川区の「ゆいの森あらかわ」にはじめて見て感動したんです。
上のTwitter投稿の後に、区にも一度相談してみましたが、かなり費用が掛かるそうで、実際行うとなると(企業さんから協賛を得るなど)工夫が必要そうです。
~~~~~
こうした様々なイベントとの連携&図書館でのイベント開催を通して、図書館に新規利用者を呼び込むことが必要だと考えています。また、それと同時に必要なのが、先に挙げたステップの②、図書館が、単なる読書の場ではなく、人々の課題を解決する場になることです。
レファレンス改善の必要性
レファレンスって聞いたことはありますか。図書館に興味のある人に取っては基礎用語ですが、それ以外の方には耳馴染みが無いかもしれません。
レファレンスサービスは、利用者が資料や情報を求める際に、図書館職員が援助するサービスです。読みたい資料を探す支援などを受けられ、目黒区立図書館にも各図書館にレファレンス用カウンターが設置されています。
でもこれ、ただ資料を探すだけなら、ネットでもできますよね。私も、今話題のChatGPTに、レファレンスサービスをお願いしました。
著者はいかにも歴史小説を書いていそうなお三方ですが、残念ながら三冊とも架空の書籍でした笑。さらに関ヶ原を福井県南部だと勘違いもしているみたいでしたが、すでにフォーマットとしては成立しており、早晩、司書さんにとってかわりそうな感じがプンプンします。では図書館で受けられるレファレンスにどのような付加価値を付けるか。
私は、本の紹介にとどまらない、相談者に寄り添った支援が必要なのだろうと思っています。例えば、鳥取県立図書館で行われているビジネス支援の取組をご紹介。マンガでまとめられているので、そちらをご覧頂いた方が良いかもしれません。
(マンガ見ました?一応文字でもご説明すると、)シャッターガードを開発したかったご相談者さんが鳥取県立図書館に相談された際、図書館はシャッターの市場動向や台風に関するデータなど基礎的な資料を提供するにとどまらず、鳥取県産業技術センターの研究員さんや国民生活金融公庫の融資課長さんなど、商品開発や企業を手助けしてくれる人たちを紹介し、商品化にたどり着いたという事例です。
こうした、地域のありとあらゆる資源を知り、相談者と結びつけるような役割は、AIにおいそれとできる芸当ではありません。こうした役割を図書館のレファレンスサービスが担えれば、特にビジネス面で悩んでいらっしゃる人々も図書館を見直すと思いますよ。
図書館ではお静かに?
もう一点、私が変えるべきと考えているのは、「図書館の静寂性」について。日本の多くの図書館が(そして目黒区のすべての図書館が)、図書館内では静かにすることを求めていますが、アメリカやイギリスなどでは、静寂性を求める空間とそうではなく雑談できる空間をうまく分けています。
図書館が単に一人で黙々と調べものをするだけの空間から、人々が資料を基に互いに意見交換し、交流し、コミュニティを作れる空間になることこそが、図書館がただ単に本を読める施設ではなく、課題を解決する空間になるために必須の要素ではないかと思っています。
その点、現在目黒区が建て替えに向けて検討している新しい区民センター図書館に期待しています。この区民センター、コンセプトが「未来とつながる 人とつながる 新たな自分とつながる」“できる”が広がる創造空間となっていて、2021年の10月に策定した『新たな目黒区民センターの基本構想』には、全国各地の図書館×○○の施設紹介が書かれています。
ぜひ、他の図書館にも、人の目を気にせず意見交換できるスペースが標準装備されるようになるといいなと期待しています。
まとめ
ここまで、図書館離れを止めるために私が必要だと考える2つのステップ、
① 図書館が館の外に出て、イベント開催などで地域と交流する積極性をもつこと。
② 図書館が、単なる読書の場ではなく、人々の課題を解決する場になること。
に沿って、書いてきました。
目黒区立図書館が、積極的に“図書館らしくない”アウトリーチイベントを開催し、館の外の地域とつながる施設になれるよう、これからも精力的に提言していきたいと思います。
4年間で私が提案&実現してきた「図書館の改革」はこちらからご覧ください。
《区政の最新情報はこちらから!》
この記事へのコメントはありません。