こんにちは。27歳(になりました)の目黒区議、かいでん和弘です。
今回のテーマは目黒区高齢者センター(田道ふれあい館)の入浴サービスについてです。我ながら「また細かい問題を取り上げたな」と思うわけなんですが、実はこのことの本質には、私が戦っていきたいと心に決めている、“負担の先送り”という問題が潜んでいて、なかなか軽視できないんです。ぜひしばらくの間お付き合いください。
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目黒区高齢者センター(田道ふれあい館)という施設があります。
清掃工場のとなり、目黒川のほとりに建つ、春は桜のきれいな施設です。目黒区がお金を出して管理しているこの施設では、各種講習会、集会室のサークル利用、ビリヤード、カラオケ、囲碁、将棋などが60歳以上の区民の方なら無料で使えます。
そしてその無料で利用できるメニューの一つに、“お風呂”があります。
古代檜でできた浴槽と、打たせ湯がついているお風呂、更衣室に入る手前にはマッサージチェアやヘルストロン(どちらもコロナにより利用休止中)まで設置してある、かなり立派な施設です。
この浴室が60歳以上の区民の方なら週1回無料で利用できると知ったとき、私は「無料というのはちょっと手厚すぎる。せめて100円でも料金を取るべきではないか。」と、強い違和感を覚えたんです。ちょっと思いを語らせてください。
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「無料はおかしい!」5つの理由
① 「受益者負担の原則」
まず当然のことながら、このお風呂の維持管理には多額の税金が投入されています。
経費を調べようとしたのですが、区ではお風呂以外のサービスも含めた「ふれあい館全体の」データしか持っていないとのことだったので正確な経費がわからず。でも、
上のとおり、極限まで少なく見積もっても、人件費150万円(年間の利用者数で割ると1回の入浴あたり129円)は毎年かかっていて、ここに最も高くつくであろう光熱水費が上乗せされるのに加え、数年に一度のペースで、数千万円規模の臨時のメンテナンス料がかかってくるというわけで、やはり多額のお金が投入されて成り立っているサービスであることがうかがえます。
(利用1回当たりの経費はいくらになるでしょうかね。人件費だけを考えると129円ですが、まあその優に数倍はかかっているでしょうね。)
でも現状、利用者からは一銭もいただいていません。すべて税金を投入することによって埋め合わせをしています。私はこれ、「利用する人は一部の限られた人なのに、それをみんなの税金で負担するってフェアじゃないな」と感じるんです(このような、利用する人自身が経費分の利用料を負担すべきだという考え方を「受益者負担の原則」といいます)。
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② 地域間での不公平性
二つ目の理由は、「近くの住民だけうらやましい…」ということです。こう書くと駄々っ子のようですが、
地図を見てもわかる通り、この施設は区内でも東の端にあって、例えば私の住んでいる南部地区から利用しようとすると、数十分バスに揺られて、そのあとでさらに10分ほど歩いていかないといけません。遠い地域の人にとってはとても利用しづらい施設なんですね。このことは、地域ごとの利用者数に如実に表れています。
実は、他の区にも似たような無料入浴施設があったりするのですが、例えば品川区には区内8か所、大田区には区内19か所というように、それぞれの地域ごとに施設が建てられています(目黒区ほど立派ではありません)。まぁ多すぎるのもそれはそれで問題ですが、こうやって他区と比べると、目黒区の高齢者センターの「1か所だけ、それも東の端にある」という事情は結構特殊なケースです。
それならば、無料という”過度に手厚いサービス”にして遠い地域の方に不公平感を抱かせるのではなく、「利用したい人は誰でも来ていいけれど、ちゃんと利用料は払ってね」というのがフェアなのではないか、ということです。
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③ 世代間の不公平性
高齢者センターは平成4年に建てられた施設で、私が59歳になる年、つまり、「あと一年で利用できるようになるぞー」という年に築60年=施設の耐用年数を迎えます。
2050年ごろの目黒区がどんな状況かを正確に予想することはできませんが、少なくとも更なる高齢化・少子化により区の税収は悪化、支出は増えていることが予想され、このような手厚いサービスを維持していくのは望み薄だろうなと、個人的に推測しています。
まぁ「私自身が入れないじゃないか!」というのは冗談半分ですが(笑)、今の高齢者世代しか受けられないサービスなのだとしたら、将来サービスを受けられない可能性の高い若者世代も含めた税金で補填するのではなく、今利用されている方ご自身に経費をご負担いただきたいなと、若者世代の一人として思うわけです。
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④ 民間との不公平性
理由の4つ目は、この問題の影響を最も強く受ける、区内の公衆浴場(銭湯)との兼ね合いです。
高齢者センターへ行けば、古代檜を使って打たせ湯まである立派な浴槽が無料で使えますが、
銭湯でしたら、どこでも定価で470円かかりますよ。
こう聞いたらどう思いますか?
間違いなく、相当数の人が高齢者センターに流れていくでしょうし、まさにこういうことを“民業圧迫”というのではないですか、という主張です。
本来銭湯こそ、地域に根差し、地域住民のつながりづくりの拠点になりうる施設ですし、特に災害時には、銭湯から被災者に対して生活用水を提供してもらえるように目黒区も協定を結んでいる、まさに平時にも非常時にも有用な施設です。しかし、区内の銭湯は年々数が減っていて、特に高齢者センター付近の銭湯は(高齢者センターの影響がどこまであったかはわかりませんが)ついに1軒も無くなってしまいました。
現在目黒区役所では、健康福祉部で高齢者センターに予算を費やすことで公衆浴場に負担をかけている一方で、産業経済部では目黒区浴場組合に毎年3,400万円以上の補助を行っているのです。公衆浴場を守りたいのか叩きたいのかわからないこの“縦割り”で“ちぐはぐ”な関係性は、やっぱり無駄が多いので整理する必要があると思います。
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⑤ 歳入確保の必要性
来年度以降、コロナ禍による景気低迷の影響を受け、目黒区では大幅な歳入減(収入減)が予想されています。そんな苦しい中では、どうすれば歳入を確保できるか、どうすれば経費を減らせるか、と知恵を絞っていかないといけません。まさに今が、見直すべき時期です。
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そもそも旧時代の遺産です…
以上の5点を持ち出すまでもなく、この高齢者センターは、昭和38年に国が制定した老人福祉法に基づく施設(法律上は老人福祉センター)なだけあって、ちょっと今の感覚にそぐわない部分も多いんです。
例えば、この施設を60歳以上が使えるということになっているのも、高齢者=65歳が当たり前になっている今となっては「若すぎ!」という感じですし、カラオケとかビリヤードとかマッサージチェアとか、そういったすべてのサービスが無料って、ちょっと手厚すぎます。
法律ができた昭和30年代は、まだ高齢化率が6%前後だったのでこんな至れり尽くせりのサービスも十分現役世代で支えていけたのでしょうけれど、今は高齢化率30%に届こうかという時代。全く背景が違いますから、普通に考えてこんなことを続けていけるわけがありません。
私の持っているこの違和感は、実際多くの自治体でも考えているようで、各地で見直しの動きがあります。
このなかで私が「これいいなー」と思ったのは、杉並区のやり方。高齢者向けの施設として60歳以上の利用料は200円に抑えつつ、一般の方にも開放して区の貴重な財産をより多くの方に使ってもらおうという効率的な方法をとっています。しかも一般の料金は460円に設定して銭湯とバランスをとっている。
これを参考にしながら、例えば目黒区でも、「60歳以上100円、一般の方が470円などできないかな。」と自分の考えを固めました。
さあ、理論武装をして、目指すべき方向性もまとまったところで、いよいよ区役所に対して主張していきます。主張していくんですが、いやー、議論の中ではいろいろなことがありました。全面対決の模様は次回(60歳以上が入浴料タダの区営施設ってなんじゃそりゃ!(下)はこちら)のブログで!
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こういった施設などが、一部の人にしか使われず、建設時の取引優遇のみで遺産になってる物が多い。
また、若い世代が利用できる場所、公園すら規制が多く、少子化を縛り抑圧するものばかりが目立つ目黒区において、親子風呂などにも利用できるよう育児世代にも還元してほしい。
ボールを使って遊べる公園が一つもないのが衝撃すぎます。
家でゲームもするな、公園は騒がず大人しく、走って遊べばいい?
老害が若い芽を摘むんでいる時代は、終わりにしたいです。